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4.唯一無二

私には、一生この人しかいないと思った推しがいる。

韓国のアイドルグループBTSのラッパー「SUGA」。現在、「Agust D」としてソロ活動をしている。

彼はグループで活動している間も、アルバムのソロ曲やミックステープで、彼の過去を明かしてくれていた。

例えば、ピアノや一人の友人、アルバイト時代に経験した事故、鬱や対人恐怖症の経験者であること…
アルバムの収録曲では、世界的アイドルグループゆえの傷や痛み、苦しみを綴っているものも多い。

彼を好きになった時、私はまだ高校生で、鬱とはほとんど無縁だった(今考えたら軽度の鬱ではあったかもしれないが)。
それでも、人と接することに対する苦痛や生きづらさは感じていたので、それよりももっと辛い経験をしているであろう彼を尊敬したし、過去を表現してくれる彼に惹かれた。

大学生になってから、ライブとペンミ(ファンミーティング)に1回ずつ行くことができた。
しかもペンミは、花道近くの席だったので、5mくらいの距離で会うことができたのだが、彼のあまりの美しさに、何も出来ず、ただ立ち尽くして目に焼きつけるように彼を見たことを覚えている。

私も鬱になってから、少し距離を置いていたし、お金もないのでファンクラブの会員でもなくなってしまったが、陰ながら応援していた。
彼が生きている、笑っている、それだけで幸せを感じられるんだと知った。
その時から、「私の推しは彼ひとり」と思った。
今までこんなに、人の幸せを願ったことはなかったから。

そんな彼が所属するグループのメンバーたちも続々と徴兵され、兵役で活動を休止し始めたが、それと同時に「Agust D」としてのソロ活動が始まった。
体調の関係で、彼の動画は見ないようにしていたのだが、意を決して、彼の新しい活動を見てみた。

一言で言うと、「絶句」した。
彼は、自分が経験した辛い出来事を曲にしてきていたが、今回は段違いだった。
今までも彼の曲を聴いて、しんどくなって涙が出ていたのに、まだあったのか。まだあなたはこんなに闇を抱えていたのか。
彼の人生は、想像を絶するものだった。

ポップでキャッチーな楽曲を作り出し、笑顔でメンバーと踊っている彼からは想像もつかないような、暗い暗い過去。

特に、自分が鬱になってから改めて見ると、よりリアルで、でも信じられないような、言葉に表せないことばかりだった。

だが、経験しただけではなく、それを「自分」として表現し、世界中に発信している彼の姿は、私をはじめ、多くの人を魅了し、惹き付けるだろうと思う。
鬱だって身近にあるものではないし、彼のような人生を送っている人も、それよりもっと過酷な人生を送っている人もきっといるだろう。

自分自身の過去を掘り下げてそんな世間の闇を伝えてくれる彼には、尊敬の念しかない。

きっと彼は今後も、色々な過去や闇を発信していくんだろう。それも、世界中の人々に。
自分の身を削って。過去を抉って。

ちなみに彼は、「Respect」という、BTSのリーダーRMとのデュエット曲を出しているので、こう表現しようと思う。

彼の行動と言葉に、その表現力に、Respectを込めて。

끝.

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