周りと差がつく「従業員マネジメント」のポイント

近年、アメリカにある日系企業はビザの問題も重なり、人材確保やリテンションに関するチャレンジを抱えているケースが多く見られます。より良い人材を確保する事や、効果的な人事制度を運用する事によって事業促進を図る企業は多いのかと思いますが、今回は更に効果を上げるためのポイントに関して考察してみました。


不可欠な「雇用の理念」と「採用のビジョン」
ビジネスキャリアの中で転職を行う事が一般的なアメリカですが、本来は企業側が雇用保障をする事で、より良い候補者を集めて長期に渡りその企業内で活躍してくれるという概念がある様です。ただし、現状はその概念とは異なり、特に流動性のある地域ではリテンションが各企業の課題となっています。そのため、成功している企業には雇用に対する理念があり、とりわけ採用に関するビジョンが明確です。

前回のNews Letterに書かせていただいた通り、例えばSouthwest航空やEnterpriseなどのアメリカにある米系企業の採用戦略には、面接時のスキルよりも人としての素地やホスピタリティ―の有無で選別する、また採用人数の数倍の候補者に対して面接を行うなどという事が挙げられました。では、日本にある米系企業はどの様な考え方があるのかというと、例えばグローバルカンパニーであるマッキンゼーでは、①リーダーシップがある事、②自頭が良い (思考スキルではなく、問題解決能力=考える力がある事)、③英語ができる事の3点が重要視されているそうです。

アメリカにある日系企業では、採用人数の数倍の候補者を集める事が難しいなどの特殊なケースもあったりますが、いずれにしろ一貫した理念やビジョンがある方が、より活躍が期待できる人材の確保に繋がります。採用に関するビジョンが明確なだけではその後の活躍には繋がらず、雇用そのものに対する理念が無ければ採用した人材が力を発揮できない、または活躍してもすぐに転職してしまうなどというリテンションの問題に繋がってしまうため、戦略を持った採用は不可欠なものとなります。


必要なリーダーシップという要素
日本にある外資系企業では、グローバルな統一基準を適用すると日本での採用が他国に比べて難しいとされる理由に英語力がまず挙げられますが、更に深刻な問題はリーダーシップの欠如と言われています。つまりグローバルで求められるスキルはリーダーシップであり、それはアメリカにある日系企業の駐在員マネージャーにも求められているものとも捉えられます。

欧米の企業や大学の大半は、従業員や学生が持つべき最も重要な資質の一つとしてリーダーシップを挙げ、アメリカの大学や大学院の入学判定に使われる小論文でも、過去のリーダーシップ体験は常に問われる最重要項目とされているそうです。

それに対して、日本ではともすればリーダーシップをネガティブなイメージで捉え、「自分の意見ばかり主張する強引な人」「他人に指示ばかりして自分は手を動かさない人」などと解釈されてしまう事もあります。最近アメリカでは、そういったタイプはリーダーではなくBossと表現する事もある様です。なお、リーダーシップの対極にあるのは、「自分はやりたくないが、誰かには是非やって欲しい」という考え方になります。

企業の管理職には様々なタイプが考えられ、組織内の人員を管理するためのマネージャーや、物事を進める際に利害関係の異なる人が多数存在する場合に利害を調整して仲介をするコーディネーター(調整役)といった役割も存在しますが、リーダーは目標を達成させるために必要な役割とされています。そのリーダーは、選ばれた人にしかなれないものではなくTrainableなスキルであるとされ、リーダー経験を積む事によって培われるものだとされています。

具体的には、「問題が起こった時にどう対応すべきか」「組織を束ねるにはどの様なコミュニケーションが必要なのか」「リーダーにはどの程度のプレッシャーがかかるものなのか」などを体験する事によってリーダーシップは身に付くとされていますが、リーダーとして重要なのは、 ①目標を掲げる(ゴールを共有する)、②先頭を走る(率先垂範する)、③決断をする(責任を負う)、④言葉で伝える(具体的に説明する)の4つのポイントが挙げられます。良い人材を採用した後は、こうしたリーダーシップによって更なる発展が見込めるのだとすると、駐在員マネージャーにとってリーダーシップは不可欠なスキルなのかもしれません。


求められる計画性
良い従業員マネジメントにはリーダーシップが必要である一方で、現在そのスキルを持ち合わせていないケースも考えられます。その場合は今後身につけて行けば良いというだけの事ですが、時間がかかってしまうと発揮する機会を逸する可能性もあります。

リーダーシップによって事業発展に向けたプランを推進できると踏まえると、限られた任期の中では極力早めに習得して自身のミッションに挑んだ方が、より良い結果が見込めるはずです。また、リーダーシップのスキルは、ただ日常業務に励んでいるだけでは習得できない、あるいは任期中に活用できない事が考えられるため、スキル習得やその後に関する計画性が非常に重要となります。そのため、残りの任期を見据えながら計画・実行して行く事によって、自身のミッションの達成や充実したキャリアへと導かれると考えられます。


一般に、「従業員マネジメント」を考えた場合は従業員サイドや人事制度というソフト面ばかりにフォーカスされる事が多いため、それを運用するハード面に目を向けて改善して行く事ができれば、今までよりも更に強力な組織となって事業を推進できるのかと思います。

組織にとっても自身にとっても有意義なリーダーシップを習得するのに「遅すぎる」事はありません。このスキルによって周りと差をつけ、今後のビジネスキャリアに弾みを付けられてはいかがでしょうか。 (2017年7号)

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