アメリカの成功企業とその仕組み ②

前回のNews Letterに引き続き、成功している大手米系企業の人事の仕組みに着目しています。今回は採用を中心とした内容になりますが、各企業に共通するポイントがあるかどうかなどを考察してみました。


重視されている採用ポイント
高い組織力を形成するためには、採用時に考慮すべきポイントがあり、「多くの応募者を集める」「組織との相性や適性を考え、後に習得できるスキルやでは判断しない」「組織が成功するために必要な能力や姿勢を明確にした後に応募者を絞り込み、単に“優秀な人材”というだけで人材を判断しない」「面接を重ねる事によって採用に対する真剣さを示し、組織への帰属意識を芽生えさせる」「採用の重要性を示すために、役員など上級の役職者を採用に極力参加させる」「採用結果を見直し、採用手順の改善を図る」などが挙げられます。

一般に、従業員の労働意欲や能力を重視する組織では30-50%もの利益アップが見られると言われており、採用はそのスターティングポイントになるため、各企業で力が入れられているのも頷けます。

また、採用後に着目されるポイントとして「人材管理の三要素」というものがあり、「利益分配」「成果に応じた報酬」「雇用保証」が重要視されています。ちなみに、この人材管理の三要素は、「業績を評価するための世界的な尺度」とも言われています。


米系企業の事例
国内路線で低コストや低料金を武器にする中で、業界最高水準の業績を維持する航空会社のSouthwest航空では、レイオフや一時解雇を行わず、社員教育や徹底した採用、利益分配、自社株保有を重視しています。つまり、従業員の貢献意欲や自発性といった、人材重視型の経営に必要な要素を生み出す運用を行っています。(もちろん、向上心がなく水準以下のサービスしか提供できない社員の解雇はある) また、面接担当者への評価も実施しています。

採用活動に関しては、ある年は2,700人を採用するにあたり、16,000人の面接を行ない(応募者は98,000人) 、ある年は、4,000人の採用に対して125,000件の応募があった様です。また、以前の組織で悪癖を身に着けてしまった人の再教育は難しいとして新卒採用を優先している事や、目的意識の無いやる気ばかり旺盛な人の採用は避けている事も興味深い点です。

例えば、客室乗務員には「指導力」「判断力」「適応力」「学習能力」が求められているなど、その組織に必要な能力や適性を明確にしておく事がポイントとされています。

質の高いサービス戦略から飛躍的に成長したレンタカー会社であるEnterpriseでは、業界的に従業員のスキルが低く見られがちで高卒者の採用が多い中で、ほとんどの採用ターゲットを大卒者としており、学問的な知識よりも質の高いサービスに興味を抱いている人を求めています。そのため、対象となるタイプはスポーツマンや慈善家など、様々なジャンルに及びます。

ここでも、採用後のスキルや能力の活かし方をよく検討した上で採用する事が重要とし、単に「優秀な人材」を採用するだけではその能力は活かしきれないとされています。

これは以前アメリカにあった日系企業の事例になりますが、Subaru-Isuzu Automotiveでは、採用に至るまでに筆記試験や適性テストなどを含めて6ヶ月以上の期間をかけており、早い場合でも9週間かけていたそうです。採用期間が長い事にはもちろんデメリットも考えられますが、ここでは厳格な人選を行う事によって人材を十分に吟味できる事や、組織への帰属意識を高めるというコンセプトの中で、長い期間と厳しい審査を経験する事で応募者が本当にここで働きたいという意思を固めて貰うメリットや、最終的に選ばれた人材にエリート意識が芽生えるというメリットに着目していた様です。

ちなみに、世界の航空会社の中でも極めて収益性とサービスの評価が高いSingapore航空も、採用活動には慎重だとされており、幹部候補生の採用では、筆記試験と2回の面接と役員による最終面接が行われる中、最初の応募選考で1割が選び出され、最終的に2%(50人に1人)が採用されるそうです。


今回挙げているのは、規模の大きいまたは現地採用で成り立っている会社の事例なので、必ずしも皆さまの組織に反映できるものばかりではないかもしれません。しかし、採用プロセスの中での準備や採用基準、面接の流れや入社後の運用などを見直して重要なポイントを抑える事で、より効果的で有意義な採用活動ができるのかもしれません。

優秀な人材の採用/確保は、ビジネスの維持/発展に欠かせないものである事を考えると、採用プロセスの一連を見直す機会を作ってみるのも良いのかもしれませんね。(2017年6号)


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