アメリカの成功企業とその仕組み ①

アメリカでビジネスを展開する中で、日頃News Letterに書かせていただいている様な人事制度は欠かせないものですが、今回は基本的な手法や日系企業の動向ではなく、アメリカにある一般的な概念や成功している大手企業の事例を挙げて考察してみました。


報酬が与えるメッセージとその重要性
アメリカでは、経済的報酬が組織の目標や経営者に対する尊敬を生むのに重要な役割を果たしているとされています。報酬は、組織がその従業員をどの程度尊重しているかを伝えるメッセージであり、従業員は自分たちを本当に尊重しているのかどうかを表すメッセージとして見ています。

しかし一方で、その影響は限られたものであり、組織が経済的報酬以外に従業員のやる気を引き起こす手段を持たなければ、いずれも活力を失ってしまうであろうとも言われています。例えば、Southwest航空では、最も大切な事が「仕事の楽しさ」であると考えられており、仕事を楽しく意味のあるものにしてくれる職場が、優秀な人材を引き付け定着させるとしています。

また、企業が5年間生存するための尺度というものがあり、それには上述の報酬に関わる「報酬制度」に加え、「人材重視レベル」というの二つの要素が存在します。人材重視レベルには「事業戦略や経営目標の書面の中で、従業員の重要性を指摘しているか」「会社資料などで、研修制度についての記載があるか」「役員の中に人材管理担当がいるか」「現在の労使関係をどの様に評価するか」というチェックポイントがありますが、報酬制度の評価には「ストックオプションが全従業員に認められているか」「ストックオプションが特定の従業員と経営幹部だけに認められているのか」「利益配分が全従業員に認められているのか」「利益配分が特定の従業員と経営幹部にのみ認められているのか」「グループに対する奨励金制度があるのか (節約賃金分配制度など)」といった部分の確認が重要だとされています。

つまり、報酬が会社への帰属意識を高める形になっているのが望ましい、と捉えられる尺度とも考えられます。


組織における「チーム」という考え方
住宅リフォーム小売チェーン最大手のHome Depotでは、「Every day, Low price」を事業戦略にしており、競争環境が激しい中で業界最高水準の賃金を支払い、建築に詳しい経験豊富な人材を雇っています。これによって、販売員が提供するサービスの質も高水準となって成功している訳ですが、これにはHome Depotの経営層が各部門の販売員を一つのチームと考え、販売活動において広範な裁量権を認めている事が背景にある様です。

グルメ・スーパーマーケットの最大手のWhole Foodsでは、階級組織が存在しない組織形態のため、本社がトップダウンで決定した規則などはほとんどなく、何事も自己評価によって進められる形が取られています。また、官僚主義が存在しない代わりに仲間同士の中での良いプレッシャーが良い効果を生んでおり、これは官僚主義には見られない「会社への帰属意識」があるからこそ実現されるものだそうです。

例えば、節約賃金分配制度によってチームの業績が直接ボーナスに結びついている仕組みや、それぞれのチーム・支店・地域が、質・サービス・収益性をベースに競ってボーナス結果が反映される仕組みがあるなど、Whole Foodsには個人やチームがお互いを高め合いながら良い環境を生んでいる様です。

インターネットサービスの最大手のGoogleでは、以前「同じ会社の従業員なのになぜ生産性の高いチームとそうでないチームがあるのか」という疑問を追求するために、分析プロジェクトが行われた事があるそうです。結果として成功するための共通パターンは見つからなかったものの、「成功するチームは何をやっても成功し、成功しないチームは何をやっても成功しない」という法則がある事が分かったそうです。

具体的には、「他者への心遣いや同情、配慮、共感」といったメンタル的な要素が重要で、例えば一つのチーム内で誰か一人だけが話し続け他のチームメイトが黙っていてしまうチームは失敗し、チームメイト全員が同じ時間だけ発言するチームは成功するという事が挙げられています。また、それはルールとして押し付けられる様なものでなく、自然とそうなる様な雰囲気がチーム内で醸成される事が重要なのだと結論付けています。

この様にGoogleもチームというものに着目しており、他者への心遣い・共感・理解力を醸成する事が、間接的にチームの生産性を高める事に繋がっていると考えられています。


これらの事例から感じられるのは、ビジネスを成功させる事や生産性を高める上で、従業員の帰属意識を高めるメッセージや、チーム単位で物事を判断し進めて行ける組織作りが重要という事です。

チーム単位で仕事をして行くためには、個人目標だけでなくチーム目標も必要となり、評価や報酬もチームやグループを対象にする必要も生じますが、ビジネスを推進させる方策の一つとして、この様な形を目指すのも良い選択となるのかもしれませんね。 (2017年5号)


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