創業前後に悩む社会保険のこと2

こんにちは!社会保険労務士の小山貴子です。

社会保険の仕組みが「こんな感じになっている」の第2回目。

今回は
「Bさん:これまで勤務しているa会社に従業員として所属しながら、自分のb会社(株式会社等)を立ち上げようとしている」
ような方へ、役に立つ情報をお届けしていきます!


●今の会社では、これまで社会保険の対象者でしたか?今後も対象者ですか?

社会保険(健康保険・厚生年金)に入ることが義務付けられた会社に所属している70歳(健康保険は75歳)未満の人は、報酬額・国籍・性別・年金受給の有無にかかわらず、条件を満たせば、選択制ではなく強制的に加入することとなります。

その条件とは以下の2つ。

1. 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、正社員など一般社員の4分の3以上(日本の正社員は週40時間(8時間/日×5日)勤務が一般的なので、3/4以上となると、週30時間以上勤務者が対象)

2. 上記の要件を満たしていなくても、次のすべてに該当する
・従業員501人以上の企業に勤務している
(2022年10月に101人以上、2024年人51人以上に変更)
・週の所定労働時間が20時間以上
・1年以上雇用の見込みがある(2022年10月から「2か月超える」に変更)
・月額賃金が8.8万円以上
・学生ではない

●自分が立ち上げる会社で役員報酬は発生させる予定ですか?

法人を立ち上げた段階で原則、社会保険の加入をしなければなりません。原則とお伝えしたのは・・・「初年度は役員報酬0円にして様子を見る」という創業者もいますが、その場合はb社では社会保険加入の義務はありませんので、a社のみ社会保険に加入します。

●2か所以上から報酬がある場合には?

(あくまで、ここでは雇用者(a)でありつつ、自身が立ち上げた会社(b)の役員という前提でお話を進めていきます。「2か所目」が業務委託や個人事業主、非常勤役員の場合、以下は対象外のお話です。また、a社が健康保険組合に加入している場合も対象外になるお話。そのような方は組合の独自ルールがありますので、ご確認されてみてください)

まずbの新規適用届や被保険者資格取得届を管轄の年金事務所に提出してください。その後、「ニ以上事業所勤務届」の書類を提出する必要があります。提出する先はご自身がお好みの会社の管轄年金事務所を選んでいただいて構いません。提出は会社がするのではなく、ご自身が提出することが原則です。大抵は元々加入されていたaの管轄年金事務所に提出されているよう。被扶養者がいらっしゃる場合は、手続きが面倒になるため、特にa社に提出することをお勧めします。

保険証は1枚だけ所有することになります。

保険料はどのような計算になるかというと・・・まず、各事業の報酬月額(※)の合算額を報酬月額とし、標準報酬月額が決まります。各事業所に按分した金額分の保険料が発生し、個人からはその半額がそれぞれの報酬から控除されます。

※対象となる報酬は、基本給のほか、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。

【例:報酬月額a社500,000円、b社300,000円の場合】
・報酬月額合算額:800,000
・標準報酬月額:健康保険790,000、厚生年金保険620,000
・a社保険料:標準報酬月額×保険料率×500,000/800,000→会社と個人でこの半額を負担
 b社保険料:標準報酬月額×保険料率×300,000/800,000→会社と個人でこの半額を負担

恐らくa社はご自身で給与計算されていらっしゃらないと思いますので、給与計算を担当している方にはご事情をお伝えする必要がありそう。そうしないと多めの保険料を徴収されることにもなります。

複(副)業が市民権を得るようになってきた昨今、上記のようなご相談が増えてきました。

なるべく皆さんにお分かりいただけるように書いてみましたが、専門用語が何度も出てきてしまい、「何のことやら?」の方もいらっしゃるかもしれません。是非お知り合いの社労士や年金事務所に詳細を尋ねてみてください。

次回は、「Cさん:会社を辞めて、個人事業主として仕事をするのですが、扶養内で働きたい」、そんな方を例に周辺情報をお伝えしてきます。

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