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ヤギさん郵便No.43「新しい下着」


お胸がないことがコンプレックス。女性に生まれたからには女性らしい体に憧れる。ふっくらした要素がない私は特にアール・ヌーヴォーを代表する画家ミュシャが描くふっくらとした女性のフォルムに憧れる。


子どもを育てたお乳は重力なんて逆らえない。コンプレックスの塊を下着屋さんで測られるなんて想像しただけでもテンションが下がる。


例えば、店員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられても話しかけないでオーラ全開にして、ささっと選んでささっと店を出る。


でも今回の下着屋のお姉さんは違った。バストのサイズって測ったことありますか?良かったら測ってみませんか?と聞かれ、あんまり自信ないんです。というと、私も大きい方じゃないんですよ。でも下着は自分が楽しむものですからとニコッと笑ってくれた。


ちょっと見るだけにしようと思っていたけど、このお店で買おうと決めた。サイズを測ってもらって、お姉さんと店内を見てまわる。こちらはコレコレコレでココがオススメです。こちらはコレコレでココがオススメなんですよ、と一つ一つ丁寧に説明してくれる。どっちの色が良いかと悩んでいると、こっちも試着してみましょう。と嫌な顔一つせず対応してくれる。


たぶん10着ぐらいは試着した。
試着するたびにお姉さんを呼んで、ブラ紐を調節してもらったり、色違いのブラを持ってきてもらったり、さっきの色の方がいいですね、という話しをしながら、ブラを選んだ。


お姉さんの常連さんも来ていた。お姉さんのファンはきっと沢山いる。お姉さんは、洋服屋で働いていても、お料理屋で働いていても、美容師でも、お姉さんのファンはたくさん出来る。



お姉さんは、人の弱い所。柔らかい部分。隠している部分を包み込んでくれる気がした。




次の日、その話を同僚にすると、お店でサイズを測ったこと一度もないんですか?と驚いていたけど、私にとってみたらとても大きなことだった。たった少しの違いにみえるかもしれないけど、お姉さんと出会った後ではいつもの世界が少しキラキラしてみえた。


それは素敵な素敵なお姉さんのおかげ。
全てを包み込んでくれたお姉さんのおかげ。









マガジン「ヤギさん郵便」をはじめました。エッセイのような手紙のような交換日記です。Yayoiさんの文章はこちらから読めます。⇩⇩⇩

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