いつのまにかメンバーの知るところでした

IDOLiSH7・和泉一織の夢小説です。
ヒロインは小鳥遊紡ではありません。

「なぁー、いおりんの好きなタイプってどんな奴〜??」
リビングでココアを飲んでいたら、向かいのソファーに座っている四葉さんにいきなり声をかけられた。
「…は!?」
思ってもみない質問にフリーズした頭を覚醒させ、動揺した自分をどうにか落ち着かせる。当の本人は特に気にした様子もなく、王様プリンのぬいぐるみと戯れている。コホンと一度咳払いをした。
「突然なにを言い出すんです?その手の相談ならもっと他に適した人材がいるんじゃないですか」
「他ってだれ?」
「そ、れは…」
いつもなら納得したりするものの、なぜこういう時に限って食い下がるのか…。私が言葉につまっていると、テレビの前で床に座っていたはずの七瀬さんから声がかかった。
「一織が珍しく言葉につまってる!なになに〜?なんの話??」
また厄介な人が増えた…ずっとテレビを見てくれていればいいものを。軽くため息をついた。
「…なんでもありませんから、テレビを見ていて下さい」
「いおりんの好きなタイプの話ー」
「!?ちょっと四葉さん!!なに言ってるんですか!?」
話を逸らす私を無意識か否か四葉さんが引き戻してくる。余計なことを…!この手の話に天真爛漫の七瀬さんが食いつかないわけがない。私が横目で確認すると、予想通り七瀬さんが目をキラキラさせている。…あぁ、できるなら今すぐこの場から去りたい。
「えー!一織、好きな人いるの!?誰、誰〜!?」
「!だ、誰がそんなこと言いました!?それに私の…す、好きな人の話ではありません!!四葉さんも間違ったことを言わないで下さい!そもそも発端はあなたが勝手に聞いてきたんでしょう!!!」
「んー、だから誰ー?」
「で、ですから質問が変わっています!誰という話ではなかったでしょう!!」
「えー、だっていおりんタイプ聞いても答えないから誰なのかを聞いた方が早いだろー?」
「!!」
完全に四葉さんのペースだ…不覚!抑えていた私の顔に熱が集中していくのが分かる。四葉さんは直球すぎて油断できない…。そもそもどうして“いる”こと前提で話が進んでいるんですか!?
「確かに!環、頭いいなー!」
「へへんッ。だろ〜??」
…どこがですか。
「それでどうなんだよ、一織〜?」
私があれこれ考えていると、七瀬さんが完全にテレビから離れて四葉さんの隣に座った。楽しそうに遠慮なく聞いてくる七瀬さんを前に、私は、ハッと気づいた。
「もとはといえば七瀬さん、あなたのせいでしょう!?あなたが勝手に…す、好きな人という話に飛躍させたんじゃないですか!!勝手に変えないで下さい!」
声を荒げる私に四葉さんと七瀬さんが顔を見合わせてニヤッとした嫌な笑みを浮かべる。マズイ、このままではこの人たちの追及は終わらない…なんとかしなければ!
「いーじゃん、へるもんじゃないしー」
「そうだよ、一織ー!俺も気になる!」
「くっ…!」
顔に集中していく熱が止まらない。どう切り抜けるべきかーーー
「おい、おまえらー!あんまオレの弟をいじめんなよー」
キッチンで夕食の準備をしている兄さんがこちらに声をかけてくる。…兄さん!!さすがです!私は全力で心の中で兄に感謝した。
「えー、だって」
「いじめてないよ、三月!ただ」
「聞き分けない奴はおかず一品ずつ減らしていくからなー!」
それでもまだ不満の声をあげている四葉さんたちに兄さんは追撃の一言をかけた。その一言に不満はパタリと止み、ごめんなさいと四葉さんたちが全力で兄さんにすがり始めた。…まったく!それなら初めから言わなければいいものを。私がマグカップに口をつけていると、それまで兄さんの手伝いをしていた逢坂さんが申し訳なさそうに八の字に眉を下げながら困ったように声をかけてきた。
「ごめんね、一織くん。僕も止めようとしたんだけど、二人のヒートアップがすごくて…ちょうど手も離せなくて」
謝罪をする逢坂さんに、構いませんとだけ私は平静を装って返した。すると、逢坂さんが説明を始めた。
「この前、環くんが番組用のアンケートで同じような質問があってなかなか書けなかったから、参考にしたかったみたいなんだ」
「そういうことでしたか…。ですが、そうだとしてもなぜ私に聞いたのでしょう?」
逢坂さんの説明でいつも言葉足らずの四葉さんの状況を把握したものの、なぜその質問を自分に向けられたのかが理解できない。
「だって、いおりん。一織日和で答えてたって聞いたから」
「!?だ、誰にですか!?」
「ゆきりん。はりきって読むようにすすめられたー」
あの人は…!私は千さんにプロデュースされた自分のフォトブックが発売されたことを思い出した。我ながらいい出来だと思うし、千さんのプロデュース力は確かなものだった。けれども!知り合いに気軽に薦めないでもらいたい…!まして、メンバーには!!
「え、環。もう読んだの?」
「まだー。だっていおりんがダメって言うから」
「なんだよー、一織のケチー!」
「そーだ、そーだ!ケチいおりん〜」
「…うるさい人たちですね。ケチで結構です。そんなに知りたいのなら勝手に読めばいいじゃないですか」
そうだ、それでいい。これで収束するのなら。それに読まれたところで何一つ具体的ではなかったはずだ。単純な人たちを相手に私は勝ちを確信した。
「お兄さんはもう読んだぞ〜」
そこへいつのまにリビングへ来ていたのか、二階堂さんが話に入ってきており、そのまま私の隣へと腰かけた。いや、それよりも驚くことがあった。
「に、二階堂さん!?読んだって…私のフォトブックをですか!?いつのまに…っ」
「んー?だって俺、イチの次に担当だったからさ〜、参考にしたくて」
いつもの得意げな笑みに若干の意地悪さを加えた顔で私を見てくる。…若干イラッとしたが、それよりも唖然とした。
「し、知りませんでした…撮影でも対談でもそんなこと一言も言ってなかったじゃないですかっ」
「まぁお兄さんプロだし?いきなりそんなこと言ってもしイチが動揺してちゃんと仕事できなかったら俺のせいだしさー」
「全員プロですよ。…まぁ、お気遣い頂いていたようでありがとうございました。ですが、私に限り仕事に支障をきたすことなどありえませんのでご安心下さい」
「そっか、それはよかった」
「けれども、読了したことを告げずに年下を欺いたことは反省して下さい」
「欺いただなんて大袈裟だな〜。お兄さんの愛ある気遣いにそういうこと言っちゃう??」
「いりません、そんな愛なんて」
「あら冷たい。ならイチは誰からの愛がほしいのよ??」
「なっ!?」
先程の表情なんて子供騙しと言える悪人ヅラでこちらにとっては非常に不愉快極まりない、本人にとってはそれは愉快であろう顔を向けてくる。
「い、いきなり二階堂さんまでなにを言い出すんですか!?」
「だって一織日和読んでもさほど分からなかったからさ〜、これは本人の口から聞いた方が早いだろうってな」
「四葉さんみたいなこと言わないで下さい」
マズイ…この食えない人相手に言い過ぎたのかもしれない。…本当になんとかしなければ!!
「えー!一織日和読んでも分からないんですか!?…なんだ〜」
「なんだよそれー!いおりんもったいぶるからてっきり分かるのかと思ったじゃん。意味ねー」
「〜〜〜どうしてあなた方はこういう時だけ耳聡いんですか!?ぜひとも仕事の時に活かして頂きたいものです!それと勝手に期待して勝手にがっかりしないで下さい!」
四葉さんと七瀬さんのタッグを相手にしていると、頼みの綱の兄さんが口を開いた。
「おまえらー、オレと一織と壮五以外夕飯ナシにするぞー!」
その言葉に私以外の全員が黙った。兄さん…ありがとうございます!兄さんだけが頼りです…!!心の中で涙した。
「それにしても、環。おまえ妙に食い下がるけど、どうしたんだよ?陸は完全に好奇心だろうけど。壮五の言ってたアンケートはちゃんと書けたんだろ?」
不思議に思った兄さんが四葉さんに尋ねた。すると四葉さんがぷいっと顔を横に向けて話し出した。
「…それは終わったけど。またあーゆーのあったらめんどーだしって思ってたら、ヤマさんが大和日和でも聞かれたって言うから」
尻すぼみに答える四葉さんの頬は赤くなっている気がした。最後の方が聞き取れなかったのだろう兄さんが四葉さんに耳を向けた。おそらく距離的に逢坂さんにも聞こえていないと思う。
「え、なんだって?環」
「ごめんね、環くん。よく聞こえなかったからもう一回言ってもらえるかな?」
すると、四葉さんの顔がますます赤くなっていった。
「わっ!環どうしたの?顔赤いよ??」
悪気のない七瀬さんがあろうことか四葉さんの様子を実況し始めた。…なんとなく予想できている私は同情した、少しだけ。
「タマ〜?みんな聞きたがってるぞ??」
絶対理解しているだろう二階堂さんの言葉に四葉さんがキッと顔を向けた。
「ヤマさん、うるさい!りっくんは黙ってろし!!」
「四葉さん、こうなったら言った方が身のためですよ」
「いおりんまでひどくね!?」
「先程散々私に尋問したあなたがそれを言いますか!?」
四葉さんは一度口を結んだ後、渋々開いた。
「俺も担当の時、聞かれんのかなって思ったの!!あーもーやだ!!!」
叫んで王様プリンに顔を埋めた四葉さんに兄さんと逢坂さんはようやく聞こえて納得した様子だった。一方、七瀬さんも理解したようだが、なぜか慌て始めた。
「え!?そんなこと聞かれるの??オレ、どうしよう〜!?」
「今から焦ってどうするんですか。落ち着いて下さい」
「い、一織はもう終わったから楽勝だもんな!」
「そうですね。全員通る道なんですから諦めて下さい。そして、自分にも矛先が向けられると分かった上で聞けるものならどうぞお尋ね下さい」
四葉さんと同じように顔を赤くして慌て出す七瀬さんに私は勝ち誇った口ぶりをする。我ながら子供じみているとも思うが、四葉さんと同じくしつこく尋問された先程のお返しだ。四葉さんと七瀬さんの反応に二階堂さんは苦笑しているが、その目は優しいものだった。
「環くん。一織くんの言う通り、みんな聞かれるんだろうからがんばってやろう。分からないのなら、僕も一緒に考えるから、ね?」
王様プリンに突っ伏したままの四葉さんに寄って逢坂さんは宥める。
「そーちゃんはへいきなのかよ〜」
「僕?どうだろう…」
真面目な逢坂さんが考えこみ始めた時、兄さんが呆れながらも楽しそうに声を出した。
「おまえら、今からそんなんでどうするんだよ!?つーか次の担当、オレだから!環はオレの番が終わるまでまだ時間あるんだからちゃんと考えとけよな!」
ニッと笑う兄さんに二階堂さんが不思議そうに口を開いた。
「へぇー、ミツは意外と平気そうだな。なんで?」
「答える前におっさん、まず二つ言わせろ…意外となんでって失礼だろ!!」
「悪い悪い。いや純粋に不思議に思ってさ」
「オレはもう答えが決まってるからさ!ちゃっちゃと答えるよ!!」
笑顔で宣言する兄さんにさすがだと思った。
「ほー…さすが男前。それじゃあ当日はどうやって聞き出してやろうかな〜」
「…一つ心配があるとすればアンタがインタビュアーだってことだな、おっさん」
いつものやりとりを始めた兄さんたちから視線をキッチンに向けたところ、おそらく今は煮込み待ちの時間なのだろう。賑わう空間を微笑ましく思っていた。…もうこれで四葉さんたちに尋ねられていた最初の内容を蒸し返されることはないだろう。私がふぅと息を吐いた時だった。
「I’m home〜♪皆さん、ただいまでーす!」
一番のムードメーカーが仕事からいつものハイテンションで帰宅したのだった。リビングの扉を開けて高らかと響いた声の方に目を向け、私は目を見開いた。
「おう、ナギ!おかえり、おつかれ!」
「お疲れさん、ナギ」
「おかえり、ナギ!」
「ナギくん、おかえりなさい。お疲れ様」
「ナギっちおかえりー」
メンバーたちに迎えられた六弥さんは嬉しそうに返事をしていた。…だが、今の私はそれどころではなかった。
「皆さん、お疲れ様です」
六弥さんが体を引いたところで、その隣にいた碧さんが頭を下げた。
「お、碧じゃん。お疲れー!」
兄さんを皮切りに皆それぞれ挨拶をする。私が固まったように黙ってしまっている中、不思議に思った碧さんから声をかけられた。
「?一織くん、どうかしましたか?」
我に返った私は視線を僅かに逸らしつつ、平静を装って言葉を返す。
「…いえ、なんでも。お疲れ様です、碧さん」
「それならよかったです。はい、お疲れ様です」
平静のつもりが、おそらく明らかにぎこちない私の言動を気にした様子もなく、碧さんは笑顔を向けてくる。…再び熱くなる顔を抑えるのだけで精一杯だ。
「ーーーおまえも隅に置けないなぁ、ナギ?碧ちゃんとどこ行ってたんだよ?」
「いやいやナギはむしろ今更だろ。けど、おっさんもからかうなよ。仕事の帰りだろ?」
二階堂さんのからかいと兄さんの問いかけに私も六弥さんに視線を向けた。その視線に気づいたのかは分からないが、六弥さんが私に向かってふっと笑った気がしたのだが…?
「はい、ナギさんの撮影スタジオが遠かったので私がお迎えに」
「Oh!アオ、今日のことはワタシたち二人だけのヒミツですよ?約束したでしょう??」
碧さんの言葉を遮ってあろうことか六弥さんが彼女を引き寄せた。…!?
「え!?ナ、ナギさん!?な、なにをっ…」
「あなたと一緒に過ごせてとても楽しかったです…またワタシとデートしてくれますか?」
明らかに動揺している碧さんの顎を持ち上げてささやく六弥さんに体中の血が沸騰するのを感じた。
「ナ、ナギさん…あの…っ」
「どうしましたか?」
赤く染まりつつある碧さんを見て、動き出した兄さんよりも、誰よりもいち早く近づいた私が六弥さんの腕を掴んだ。メンバーから驚いている視線を浴びているのを自覚したが、そんなことには構っていられない。
「ーーー六弥さん、悪ふざけが過ぎます。碧さんを離して下さい」
私の毅然とした言動に六弥さんが一度目を瞬いた後、またふっと笑って彼女を離した。解放された碧さんは動揺を落ち着けるのに必死な様子である。少ししてから、私は服が突っ張るような違和感を覚えた。引っ張られるような服の方向を確認すると、碧さんが震える指で私の服の袖を掴んでいたのだった。私は内心驚いたが、その状態のまま変えることをしなかった。
「Oh〜…ワタシとしたことが女性を驚かせてしまいましたね。すみませんでした、アオ」
まだ少し顔の赤い碧さんに六弥さんは謝罪した。
「い、いえ…ですが、ナギさん。先程のようなことは本当に大切な女性にしてあげて下さいね」
最初の方こそ声が震えていたが、最後に向かってキッパリと伝える碧さんの年相応さを垣間見た。六弥さんは一瞬、間を置いて微笑んだ。
「ーーーYES.あなたのナイトに誓いましょう」
「…ナイト?」
六弥さんの言葉に碧さんは首を傾げた。私も内心で頭をフル回転させている中、六弥さんにどこか意味深にウインクをされた。その行動で私はハッとし、口元を覆った。顔がカァッと赤くなる。満足した様子の六弥さんは兄さんがいる方へ足を向けた。

リビングに賑わいが戻る中、私は速い鼓動を抑えながら、碧さんに振り返る。彼女の指先はもう震えてはいなかったが、変わらず私の袖を握っている。その顔も赤くはなく、ピンク色といったところだった。おそらく断然、私の方が赤いだろうが…これはもう仕方ない。私は努めて自然に優しく声をかけた。
「ーーー碧さん、大丈夫ですか?」
私の声にハッとしたように彼女が見上げたかと思うと、瞬時に彼女の顔も再び赤く染まった。?どうしたのだろうか…?
「どうかしましたか?碧さん」
「い、いえ!その、大丈夫ですから…っ」
俯いてどこかぎこちなく答える彼女の様子がとても気になったものの、まだ先程の出来事が尾を引いているのだろうかと思い至った。そこで私は袖に置かれている彼女の指先に自分の手を重ねた。碧さんが反射的に引きかけた彼女の手を私は優しく、だがしっかりと離さなかった。そして、少し前屈みになってささやいた。
「ーーーもう大丈夫ですから、碧さん…安心して下さい」
私の声に安心したのか、碧さんはこくりと頷いた。
「ありがとうございます…一織くん」
「はい、どういたしまして」
消え入るような彼女の声に尚も安心させるように一際優しく答えた。角度的に正面からは見えないが、碧さんが微笑んでくれたように思える。私もふっと笑う。そこで今の状態に気づいたらしい碧さんが動いた。
「あ!い、一織くん、ごめんなさい!ずっと掴んでしまってて…そのっ…離しますねっ」
碧さんが手を離そうしたところを、今度は思わず掴んだ。驚いて見上げてくる碧さんに私は視線を彷徨わせる。
「その、私は大丈夫ですから…もうしばらく、このままで…いて下さい」
私の言葉に碧さんの顔も再び赤くなった気がした。
「…はい」
「ありがとうございます」
再び俯いてしまった碧さんの顔を見ることは叶わないが、今の私にとってもそれでちょうどいいのかもしれない。きっと真っ赤だから…私も。

「ーーーで?結局仕事だったんだろ、ナギ??」
「オフコース!ちゃんとモデルの仕事をこなしてきましたよ〜!褒めて下さい、ミツーキ!」
「おう、よくやったナギ!…っておい!おまえさっきの碧に対してのちょっかいはなんだよ!?度が過ぎんだろ!!」
「Oh…レディーを動揺させてしまうとは不覚です。少し加減を間違えてしまいました。反省してまーす」
「本当だろうな!?場合によっちゃ幼なじみのオレがただじゃおかねぇぞ!?」
「ノーノー!ミツーキ!勘弁して下さーい!」
「まぁまぁ落ち着けって、ミツ。おまえにまで制裁されたらさすがにナギがかわいそうだろ…でもまぁお兄さんもさっきのはやり過ぎだと思うから反省しろよ!イチやミツだけじゃなく俺も怒るから肝に銘じときなさい」
「…OK.肝に銘じます」
「よっしゃ!じゃあこれで一件落ちゃー…ってイチってことは…もしかして大和さんも気づいてんのか??」
「いや、だって…分かりやすすぎだろ。むしろあれで気づくなって方が無理。一織日和読むよりも明らかだって」
「それもそうだなー…ん?てことはもしかしてナギも?」
「なんのことです?」
「…まぁおまえさんのさっきのあれは絶対イチをけしかけたんだろ」
「マジか!?」
「…先に始めたのはヤマトですよ?これ以上はピュアボーイ・イオリのためにモクヒしまーす!」
「黙秘って…もうそれ認めてるも同然だろー!…一織、がんばれよ!」

「ーーーなぁ、そーちゃん。りっくん。俺、いおりんの好きなタイプ分かったかもしんない」
「奇遇だね、環くん。僕もだよ」
「オレも!オレも分かった気がします!」
「なんだよ、いおりん。分かりやすすぎ。一織日和読むまでもねーじゃん」
「うん、それにさっきの大和さんのあの口ぶりじゃ確信的なことは書かれていないみたいだしね。それにしてもあの一織くんが仕事以外のことであんなに分かりやすく動揺するところなんて初めて見たな」
「そうですよね!よし!オレ、一織を応援します!フレーフレーい・お・り!!」

ーーーなにやらリビングの二方向からコソコソと聞こえるのですが…!?…っ!今はなにも聞こえないふりをすることにします。

頬が朱色に染まったままの一織は、目を閉じ、左腕から伝わる温もりに身と心を委ねた…。

END

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