ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』 雑感想

〇登場人物メモ(ぶっちゃけ性格とか何も信用できないが……)

●カミーユ・ベルーヴェン
警察の道徳的権威。
身長145cmの低身長。優秀な刑事でハンディキャップを負っていることからもマスコミに注目されている。
妻のイレーヌが妊娠し、良い夫、良い父親になれない自分に苛立っている。
母が画家だったため絵画に詳しい。自分でもデッサンをする。
母との間に確執があった。

●イレーヌ
カミーユの妻。
美しい女性。
カミーユの仕事が忙しく、妊娠した中で寂しく思っている。

●ルイ
カミーユの部下
いかにも良い奴で善良。
いわゆる金持ちのボンボンで、成績優秀、真面目。
自己実現を目指し警察になったけど、いじめにあったりと不遇だった。
しかし優秀で捜査官に向いており、カミーユが目を掛けている。
カミーユのことを尊敬している。
カミーユはルイに依存しているようにも見える。
ブロンド。
髪をかきあげる時は、
右手→自信があり、考えがはっきりしている。
左手→当惑、気まずさ。
エレガント、スリム、デリケートな所が癪に触る。
ルイの辞書に「疑い」の文字はない。

●アルマン
みじめったらしい。
20年近い経歴で「警察史上最悪の守銭奴」 。
つまりケチ。
見た目は年齢不詳でがりがり。常に不安げな顔。
神経の病気(?)かなにか。
アルマンは自分の性質を自覚しているので尚更みじめ。
黙々と仕事をする。几帳面。
細かい情報をかき集めたい欲求。無限の忍耐で手がかりを手に入れる。
同僚から一目置かれているが、好かれない。

●ジャン=クロード・マレヴァル
26歳
高身長、黒髪、ハンサムでモテる。
ずる賢い目も魅力的。
放蕩者・浪費家。
アルマンが不足なら、マレヴァルは過剰。
魅力的で魅力を乱用する(女に対し)。
年中やつれた顔。
汚職警官になりそう。
アメリカタバコを手放さない。
競馬好き。
酒はボウモア。
女好き。
柔道の国内チャンピオンで今も体型も維持。

●ジャン・ル・グエン
部長でカミーユの上司。
巨漢 でダイエットの効果無し。
廃王のような態度を取る。

●ベルジュレ
鑑識課長
骨の髄まで軍人。

〇本編(読了後に書いてるので思い出しながら)

文章が読みやすいなあという印象。
こなれた感じね。
海外の小説は翻訳でけっこう変わるから、文章が読みやすくて安っぽくないのは良いことだ。

カミーユ警部の145センチにビビった。私より低い!
好感を懐ける人物像だと思った。
まあいい奴よね。部下を気遣ってる感じで(のちのち裏切られるけど)。

警察メンバーのキャラが濃いなあって思った。
現実にいそうだけど絶妙に「キャラ」っぽいのかな。
キャラ小説みたいな雰囲気。ラノベっぽいっていうか。
(後々これも意味が分かるけど)。

イレーヌとの関係が上手くいってるの罠でしかないでしょ(まあ、ちょっと不安要素もあるけども)。
警察主人公で夫婦関係がまともにいくわけないってイメージない?
険悪か、離婚してるか。片方死ぬか。
というかタイトル『悲しみのイレーヌ』だよ。
うわ、これ絶対に死ぬじゃーん(実際死ぬ)。
妊婦とかそれっぽいじゃーん。

死体の描写がエグい。
手紙で細工する場面が細かく描写されるんだけど、なかなかキツかった。
口を裂くシーンとか(うわ! 思い出しちゃった!)。

カミーユとルイとの関係がなかなか面白い。
カミーユがルイにおすすめのレストランを聞いたり、
ルイがカミーユに花を買ったか確認したり、

ルイ「ぼくの辞職をお望みですか?」
カミーユ「こんな状態でおれを見捨てないでくれ。頼むから」

ちょっと依存してるなあって。

ルイはマジモンの良い奴だよね。マレヴァルにお金貸したり。

カミーユがルイやマレヴァルを子どもみたいに表現するので、
これまた人情派だなあって思った(しかしこれも実際どうなのやら)。

この小説460ページまでが本編なんだけど、407ページから第二部なの。
こんな終盤で第二部ってなんや? ってなるやん。
見覚えのあるやりとりが出てくるのよ。
マレヴァルがビュイッソンに情報を流してたってビュイッソンの小説で分かって、
カミーユとマレヴァルが話す。
もうとっくに判明したじゃん? って。
それでわかるわけ。

第一部は全部、ビュイッソンが書いた小説だ、これ……

今までなに読まされてたんだ!?
「キャラ」っぽさはそのせいか!?
カミーユなんかかなり美化されてるみたいだし。
確かに警察主人公ってろくなのいないよ。
思い返してみれば確かにおかしいわ。
カミーユ「情が深くて優しい班長なんてものは、小説にしか出てこないんだ」
いうて小説だけどな!

暴言を吐くカミーユ警部にちょっとがっかりした自分がいた。
珍しい主人公だと思ったんだけどなあ。
あとやっぱり良い奴っていうのは、普通に好感が湧くものさ。

人物像を全てリセットされたようなものなので人物メモこれ以降役に立つかな……
合ってる部分もあると信じるぞ。

ビュイッソンはカミーユとルイの関係に萌えてるんだなあ、と思いました。はい。

ビュイッソンが犯人だと判明してから手紙でしか登場してない。
っていうか、イレーヌとかビュイッソンとかは一部でしか出てないから、
直接登場はしてないのか……

いやあ、面白いな。
そういう面白い表現する作品好きだよ。

終わってみれば、ビュイッソンの小説の通りに終わってしまったんだよ。この物語は。
踊らされていたんだよ。カミーユ警部は。
物語のコマだったカミーユ警部。
主人公だったカミーユ警部。

ビュイッソンの最後の手紙 引用
『結局のところ、あなたもわたしも、人々がこうだと思う人間ではありません。わたしたちは、実は自分たちが思うより似ているのかもしれませんね。そもそもある意味では、あなたの奥さんを殺したのはわたしでもあり、あなたでもあるんじゃありませんか?
この問いについてぜひ考えてみてください。』

「ヴェル―ヴェン警部」に徹しようとしたカミーユ。
頭のおかしな殺人鬼に徹したビュイッソン。

そうだなあ。二人は役者かな。
カミーユも結局、イレーヌを殺す物語の登場人物として動いてしまった。
イレーヌを殺す物語を完成させてしまった。

物語というのは結末が決まっているんだ。
終わるように終わっちゃった。

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