ダブり〜3限目〜G

「ばぁちゃん!行ってくるわ」

ゴウは母親を亡くして以来おばぁちゃんと
2人で暮らしている。
もともとゴウはおばぁちゃん子だった。
母親1人で育てていた為、かわりに祖父母が面倒を見ていたから。
おじぃちゃんは2年前に他界し今では
おばぁちゃん1人だ。
ゴウは自分の母親の事はおばぁちゃんに聞くが
父親の事は聞かないようだ。
自分の娘と離婚した父親の話をする事に気を使っているのだろう?
なんせ、おばぁちゃんからも自分の義理の息子の
話しは全くないから。

ばぁちゃんはゴウの姿を見て
「おや、珍しいね!?」
「あんた、今日は何かの発表会かい?」

この日のゴウはキメていた。

「何言ってんの?デートだよ、デートっ」

ばぁちゃんは
「そうかいデートかい?じゃーこれ持って行き」と言ってゴウにお金を渡した。

ゴウは
「いいよ!金なら大丈夫だから」
と言って断ったが、ばぁちゃんは
「いいから、いいから持って行きなさい」
「男が出してやらんと!じぃさんみたいに女に出させるなんて事しちゃならんよ」
と言ってゴウに万札を2枚握らした。

ゴウの羽振りの良さはおばぁちゃんに
似たんだな。

お札を財布に入れると
「サンキューな!大事に使わしてもらうよ」
と言ったがゴウは思った。

【あぁやってすぐ出すから
    じぃちゃんは甘えたんじゃねぇか??】

時計を見て
「あっ、やべぇ!行ってくるわ」
とモトキタとの待ち合わせ場所へ行く為に駅へ
向かった。


その頃モトキタは?と言うと
待ち合わせ場所へ着いていたようだ。

時計を見て
「さすがに早く着きすぎたか?」
目の前のカフェを見て
「あっ、ちょうどテラス席があるし、そこで
待つかっ」
と言ってコーヒーとサンドイッチを頼んで
テラス席でゴウを待っていた。

朝のひととき・・

目の前にはランニングする人。
同じ待ち合わせをする人。
手を繋いで歩いているカップル。
友達同士笑いながら話してるグループなど。

このままゴウと合流か!?って言うと
そうでもないのが物語ってやつだ。

モトキタがテラス席でスマホを取り出し
カフェの雰囲気を

パシャっ

写真を撮って、SNSにアップしながら
ゴウを待っていると、2人組の男が声を掛けてきた。

「もしもーし、おねぇさん?」

モトキタは無視をした。

「ねぇ、ねぇ、聞いてよ」
モトキタは無視を続けた。

「おーいっ、聞こえてるでしょ?」
と執拗に話かけてくるので、モトキタは軽くあしらってしのぐことにした。

「どうかされました?」

すると男のひとりが
「聞こえてるじゃんっ」
「もしかしておねぇさん1人?
   良かったら一緒に座ってもいいかな?」

モトキタは
「ごめんなさい。待ち合わせですから」
「席なら他に空いてますよ」
と他の席を指差して断った。

男は
「えーっ、いいじゃん」
「わかった!じゃー連絡先くらい交換しようよ」
と粘る2人組。

モトキタは
【面倒くさい奴に絡まれた】と思っていた。

そこへゴウが来た。
「おっ、先生!はぇ〜なっ」
「俺、早く着いたかと思ってたけど」

モトキタは2人組の男をそっちのけで
「おはよう」
と手を振りながら言った。

するとゴウは男達に指を指して
「てか、コイツらは?」
とモトキタに聞いた。

モトキタはあっさり
「さぁ〜?」と返した。

ゴウは、その2人組に
「わりぃ、ホット買ってきて!
   あと、お前らも好きなん買っていいから」
と言って財布からお金を出して机に置いた。

席に座り
「で、今日どこいくよ?」
と2人組を無視してモトキタに話だした。

そんな2人を見て
「ちょっと、ちょっと、お前何様のつもり?」
「なめてんのか?あぁん?」
と男の1人がゴウに言った。

ゴウは
「えっ?」
と【何が?】的な顔をしてモトキタに
「俺、何か悪いことした?」
と小声で聞いた。
モトキタも【えっ】って顔をしていた。

ゴウはバカなのだ。

男達は何も間違ってない。
そいつらにしちゃ、たまたまた通りかかった
カフェにそこそこの美人が座ってるんだ。
少し話位はしたいと思うのは当然だ。

そこに、初対面の男が来て突然に
「コーヒー」買って来いって言われて
相手が「はぁ?」ってなるのは当然だ。

ゴウはそんなことお構いなしに
「結構待った?」
と普通にモトキタに話かけた。

「少しだけ」と答えたが【何かが違う】と
思っているモトキタは立っている2人組を見た。

ゴウは
「あっ!ゴメン、言えよ〜っ」
「500円じゃ足りないか?」
と2人組に言って財布からお金を出そうとした。

男はゴウの髪の毛を掴んでこう言った。
「なめてんじゃねぇよ?」

髪の毛を掴まれたゴウは
「テメー何してるかわかってんだろうな?」
「今ならコーヒー買ってくるだけで
            許してやるから」
と上を向いて言った。

男は
「はぁ??完全になめてるだろ?」
と今にも喧嘩になりそうな雰囲気だ。

いや、男達は間違っていないと思う。
当然の行為だ。

【やっぱり何かがおかしい】と思ったモトキタは
「オカウエくん、もう行こう。
     あっ、わたし服買いたなぁ」
「あなた達もゴメンね」
と男達に申し訳なさそうに言って席を立った。

するともう1人の男が
「なんだ?テメーこっちが下手に出てりゃ」
とモトキタに言った。

今まで、黙って髪の毛を掴まれていたゴウは
その男にモトキタのほうにある水が入った
コップを握りその男にかけてこう言った。

パシャーン

コップの水は男の顔にかかり
「っテメーっ。何しやがる!コラぁ!」

それを見たもう1人は掴んでいた手をはなし
「オモテでろっ」

ゴウは
「下手?何言ってんだ?」
「勘違いするな!
   下手に出てやってるのはこっちだぞ」
「あぁ、今すぐやってやるよ」
と言って立ち上がりその男の胸ぐらを掴んだ。

一触即発。
あとはどちらかが手を出すのがゴングだろう。


バァーン!
とモトキタはテーブルを叩き
「オカウエゴウ!」
とモトキタが叫んだ。

店内にはもちろん歩いてた人も立ち止まりこちらを見ている。

ゴウはモトキタのほうを見た。

するとモトキタは
「今日は楽しもうと思ってたのに!!
      これじゃ出だしから台無しだよ!」
と少し怒り気味だった。
ゴウはそんなモトキタを見て男の胸ぐらから
手を離した。

そして「わりぃ」とモトキタに誤った。

それを見た男が
「何?何?お前、びびってんのか?」
とさらに吹っ掛けた。

それを聞いたゴウは何も言わずその男を睨んだ。
ゴウが放つ無言の圧を見てもう1人の男が
「右に2連、左に1連のピアスでオカウエ?」
とぼやいた。
うまく聞き取れなかったのか、
「何?ピアスが何?」
と男が聞くと、それを聞かれた男がゴウに言った

「お前?オカウエってイズミのオカウエか?」

ゴウは
「だったら何だ?」
と返した。

男はもう1人の男を止めて
「やべぇって、こいつオカウエだぞ」
と言った。

さっきまで、血気盛んだった男がそれを聞いて
「マ・・ジ・・?ディズニーのか?」
とゴウに聞くとゴウは
「だったら何だ?」
と返した。

「すみませんでした」

ゴウは
「コーヒーで許してやる」
2人組は
「はいっ!ありがとうございます」

コーヒーを買いに行った。

ゴウは
「先生、とりあえずコーヒーでも飲んでから
いこうよ」
と言って髪の毛を触りながら席に座った。

モトキタは
「オカウエくん、もうハラハラさせないで」
「でも、本当有名なんだね?」
ゴウは少し自慢げに
「まぁな!並のインフルエンサーよりか有名かもよ」
と言った。

モトキタは少し呆れ
「もっと他の事で有名になれば良いのに」
「きっとオカウエくんならどの道でも有名に
なれるよ」
と言った。

それを聞いたゴウは
「それもそうだな・・
     俺もそろそろ大人にならないとな」
と言った。

モトキタは仕切り直し
「やっぱ、若いっていいね!」
それを聞いたゴウは
「急になんだよ??」
モトキタは鞄にスマホをなおして
「さぁ!今日は遊ぼう!!」
と言ってゴウをテラス席から連れ出した。

モトキタは普段のストレス発散に。
ゴウは・・
まぁアイツなりの発散に。

苦手な絶叫マシンやショッピングを2人は
楽しんだ。

滅多に行く事のない場所だったせいか
2人は先生と生徒と言う関係性を忘れ
存分に楽しんだ。

日が暮れ、ゴウはモトキタを家まで送った。

モトキタは
「ありがと!ここで大丈夫だから」
「それにしても今日は楽しかった」

それを聞いたゴウは
「俺のほうこそ、楽しかったよ」
と言った。

モトキタは
「それじゃ、また学校で」

ゴウは
「じゃー」

モトキタは振り向いて帰って行った。

ゴウはその後ろ姿を見て
「先生っ!」
と声をかけた。

モトキタは振り返り
「どうした?」
と言った。

ゴウは
「やっぱ、いいわ!またな」
と言って振り返って帰ろうとすると

モトキタは
「オカウエくん!」
とゴウを呼んだ。

ゴウは
「何っ?」
と言うと、モトキタは
「また、遊ぼう!そうだっ!!次はコニシくん達も誘って行こうね!」

ゴウは
「あぁ、ユウにも言っておくよ」

モトキタは手を振って帰っていった。

ゴウは少し歩き、タバコをくわえ
「あれっ、ライターは??」
とポケットを探っていると
「あっ!忘れてた」

着ていたパーカーのお腹辺りにあるポケットから
プレゼント用に包装された長方形の箱を手にとり
「渡すの完全に忘れてた。今なら間に合うか?」
と言って再びパーカーのポケットに入れ
モトキタのところへ戻った。

ゴウがマンションの下へつくと
ちょうどモトキタが廊下を歩き部屋へ向かう
ところだった。

ゴウは下から
「おーいっ」
と声を掛けたが気付いていない様子だった。

仕方なくゴウは階段をあがり部屋へ向かった。

「きゃー」

と叫び声が聞こえた

「先生っ!?」
とゴウは大声で叫びモトキタのところへ向かった。

ハァ ハァ

「どうした?」
とモトキタに声を掛けると、モトキタはゴウの
顔見て安心したのか、
「オカウエくん」
と言って抱きついた。

突然の事にゴウは
「どうした?」
と言って玄関のほうを見るとそこには

コロス

オマエハオレノモノダ

コエテハイケナイセンヲコエタセイトモコロス

と部屋の外壁に書かれていた。

ひどく怯えるモトキタにゴウは
「大丈夫。大丈夫。俺がいる」
と言った。

「とにかく、部屋に入っておっさんに連絡しよ」
「俺たちも探して見つけ出しすから」

震えて鞄から鍵が出せないようだったから
ゴウは
「わりぃ、鞄から鍵取るぞ」
と言ってキーケースを取り、玄関のドアを開けた。
「大丈夫か?電気は??」
と言って右の壁を手でなぞるとスイッチがあった

そのままスイッチを入れ部屋の灯りをつけた。

ドンっ

もの凄い衝撃がゴウを襲った。

ゴウは何者かに鈍器で殴られた。
その衝撃でゴウは倒れた。

「キャー」
とモトキタが叫んだが、その男はモトキタの口を
抑えこう言った。

「全部ナオさんのせいだからね。
         騒いだらコイツを殺すよ」

ゴウは意識を飛ばしていた。


その頃
モトキタのマンションにシマキとテマエが着いた。

テマエが
「電気ついてるね」
シマキは
「そりゃー休日だかんな!家にいてるだろ?」
と言った。
するとテマエが
「あれ?今日ゴウくんと出かけるって言ってなかった?」
「もう、帰ってきたのかな??」
シマキは
「さぁー??」
「電話する?」
と言うとテマエは
「やめといたら?もしかすると一緒かも
               しれないし」
と言ってシマキの胸を揉んだ。

シマキは
「キッショっ!てか、ヤバくないか?」
「逆にドタキャンされて荒れてるかも
              しんねーしな」
「でも家にいる事は間違いねぇから
           とりあえず見とくか」

そう2人はたまたまモトキタのマンションを
見に来たのだった。
部屋の中にゴウが居る事も知らずに。

部屋では、
「オカウエくん?大丈夫?」
と声を掛けるが、ゴウの反応はない。

男は
「こいつが悪いんだよ」
「ナオさんは僕のものなのに」
と言ってモトキタの手足を縛り
ゴウの手足も縛り付けた。

男は手にハンマーを持っていた。

モトキタは
「どうしてこんな事するの?あなた誰?」
「こんな事やめて下さい」

男はその問いはそっちのけで
「ナオさんはこの服が似合うよ」
と言ってメイド服を鞄から出した。
「さぁ、お着替えをしましょう」

モトキタは
「救急車呼んで、この子を解放して」
「じゃないと叫ぶわよ」

そんな事もお構いなしで男はモトキタの服を
脱がそうとした

「キャー、やめてー、誰かぁぁ!?」

「もうナオさん、少し静かにして」
男は再び口を抑えテープの様なものでモトキタの
口に貼り付けた。

「今何か聞こえなかった?」
シマキがテマエに言った。

テマエは
「やっぱり?聞こえた?」
「今、彼女ホシィ〜って俺の心が叫んだ」

「やっぱり念って伝わるんだな??」
「これからは、あまり変な事は念じないようにしよう」

シマキは呆れていた。

テマエは念じた。

「ストーカーきますように」

シマキは
「バカか!?お前は?」
「そんなことで来るわけねぇだろ?」

すると
「おいっ!シマキ!?」
とテマエがシマキを呼んだ。
シマキは
「バカはまだ念じてるのか?」
とテマエに聞いた。

テマエは
「ちげーよっ!あれ!」
と指をさした。
その方向は、モトキタのマンションの郵便ポスト
のほうだった。
テマエは
「あれ、おかしくないか?」
シマキは
「だなぁ??あきらかに何かあさってるよな?」

怪しい動きの奴がポストをあさっている。

シマキは
「行くけ?」
と言ったがテマエは
「とりあえず、ゴウくんに連絡しよう」
と言って連絡をした。

プルルル プルルル プルルル

「あっ、ゴウ君?」

おかけになった・・・

「ちっ、留守電かよ!あー何やってんだよ」
と何度もかかけては切ってを繰り返していた。

シマキが
「おいっ!動いたぞ」
テマエは
「どれ?奴はどこいく?」

奴は、正面から駐輪場のほうへ周りマンションの
裏のほうへ歩いて行った。

テマエは
「裏、行ったな。絶対怪しいって」
「あーほんと何してんだよぉぉ!」
と言ってスマホを見ていた。


モトキタの部屋では
「ナオさん、着替えよ!」
と男はモトキタの髪を撫でながら言った。

ゴウは、不意打ちで頭を殴られたせいで
まだ倒れたままだった。

口をふさがれたモトキタは抵抗しながら
何かを男に訴えていた。

男は
「ナオさん?どうしたの?」
と言ってモトキタの口に貼ってあるテープを
はがした。

モトキタは
「救急車を呼んで」
とゴウを気にしていた。

男は
「大丈夫。ナオさんにまとわりつく害虫は
駆除しないと・・」
「さっ、着替えよう」

モトキタは
「オカウエくん!オカウエくん!」
とゴウに呼びかけた。

パシッ

男はモトキタの頬を叩いた。

モトキタは男を睨みつけて言った。
「あんた、最低ね」
男は
「ナオさん?どうしてわかってくれないの?」
「僕はこんなにも君を愛してるのに」

モトキタは男を睨みつけていた。

そのモトキタを見て男は
「わかってくれないんだね?」
「仕方ない。お仕置きだ」
と言ってモトキタの頬をもう一度叩いた。

ドカッ

ゴウが意識を取り戻し手足を縛られたまま
男に飛びかかった。
だけど、手足を縛られていてこれ以上は動けないゴウはモトキタの上におい被さった。

男は
「僕のナオさんから離れろ」
と言ってゴウを蹴り続けた。

そんなゴウを見て
「お願いします。私の生徒をこれ以上
              傷つけないで」
とモトキタは男に言った。

その様な事が壁の向こう側で起きている事も
知らずシマキとテマエは
「いくら電話しても出ねー」
「何かあったんじゃね?」
とテマエが言った。

シマキが
「仕方ね、ユウくんに連絡してみよう」
「何かわかるかも」
と言って連絡をした。

「どうした?」

「あっ、ユウくん・・・」

と俺は今の状況をシマキから聞いた。

すると

「ユウくん・・・」

「もしもし?おいっ??もしもし」
と向こうの反応が弱いので聞いた。
「聞こえてる?」

するとシマキの声じゃない別の声が俺に話した
「久しぶりだな!ユウ」

俺は一瞬でわかった。
「カワヨシ?久しぶりだな」
「明日から来るんだろ?」

カワヨシは俺とタメで現在3年。
ゴウと仲が良くディズニーのNo.2だ。
暴力事件で停学中だったが、明日から停学が明け
学校へ来る予定だ。

カワヨシは
「相変わらず楽しい事してるな?」
「詳しいことはわからないが、何かできるか?」

俺は
「全ては後で話す。だから今はそこの2人と
一緒に動いてくれ」
「俺も今からそっちへ行くから」

カワヨシは
「じゃーまた後で!」
と言って電話を切った。

タイケが
「何かあったか?」

俺は電話での内容をメンバーに話した。

「って事だから、ちょっと行ってくるわ」
と言ってモトキタのマンションへ向かう事にした

「ちょっと待てって」
とタイケが俺を止めた。

「俺たちも一緒に行く」
「なぁ?」
と言ってメンバーに聞いた。
イサカにウエイ、ナカヒロは
「おう!もちろんそのつもりだよ」
と言ってくれた。
俺は
「いいのか?俺の学校の事なのに」

ナカヒロは
「だからだよ!なぁ?」

イサカは
「俺たちは今の楽しそうなユウを見てんのが
楽しいんだ」

俺は
「楽しそう?別に前と変わんねぇだろ?」
と言った。

ウエイは
「いやっ!明らかに去年とは違う」
「なんにせよ、お前を変えた先生には挨拶しとかねぇとな」

俺は
「親かっ!?お前は!」
と言った。

俺たちはモトキタのマンションへ向かった。

3限目Hへつづく

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