『海はなかった』

目覚めた筈の海辺の観覧車に一人見付けた冗長冗漫な貴方はナニを食みナニを繕う
日傘が無いと日の出から日の入り迄目を開けていられないのは瞳が光源を思うから
揺さぶられ乍ら弄び乍ら片足を掛けている枝のような窓に寄り添い矢車を愛でるその口に含むそれからとそれまで

貴方はナニを食みナニを繕う

白い手袋を避け明るい昼にひなげしを摘み胸の儚い連鎖を尋ね
驕慢さを嘆くことなく遊具に戯れる手は左手だったのかもしれないけれど蝉のような声は少しも恐れることなく何時か終り終わり続けるあの海を引き裂いていく砂山の菫紫薄墨色を千年前に置いてきたのは幾つもの墓標が並列し交差して数が数えられないから戸惑うからその口が

子どもながらに

だけど息継ぎすることだけは旨くて波頭に呑まれず泳ぎ切って弔いもせずその優雅さを饒舌に語るなら

貴方はナニを食みナニを繕う

緑柱石の翠緑色透明に飛び込む肌に纏わる置いていかれた記憶と記録高温でいかれたテープの海の葬送行進

貴方はナニを食みナニを繕う

ナニを食みナニを繕う

噫海辺の観覧車に一人見付けた冗長冗漫な貴方

唯  

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