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『リンデン』

起きては眠り、眠っては起きるあわいで夢を見る。擦っても擦っても落ちない瑠璃のインクと黄昏の円筒の内側の町。曇り硝子と花礫。朧の道なりの建物に透明な物の総称を見た。夢に訪れる蜂鳥が囁けば町に降り続ける花弁とキャラメルハイの擬宝珠を冷ややかな石畳の匂いに紛れさせ乍見付けた圧倒的な眠りへの希求と水晶のうねりの相似
明日は昨日の続き、昨日は明日の砂丘の総体
街に閃く鳥の羽ばたきに撃たれ鐘は鳴り、果てのない筒の内側に音が落ち竜胆のは灯る
粗忽な壺に納められた文字
あわいの理、オーバードライブ
町を染める花は赤。風がザァと吹き女の胸に落ちた赤い星。ギターを鳴らせ笛を吹け、小人が輪になりステップを踏めば色とりどりの糸で紡がれたマントが翻り地の底から天使が噴き出す。低音の祈りはソリッドな金剛石と変わり微熱が続く皇女の口に含められ心の臓に赤い花を巡らせる
謳え謳え謳え夜啼き鳥、繰り返す呪文に秘技は隠され時空の狭間に捻れた時計が正鵠を誦。舞え、どこまでも、無限の穹に尻込みもせず秘蹟を踊れば、花弁のそれのように女と皇女は重なり溶け合って世界のノイズを言祝ぎ、なみなみと盃に注がれた葡萄酒を片手に花を愛で飲み干せばなん気もなしに花の夢は変わり続け麗しのマウリッチオが弾くはマドリガル
明日は昨日の続き、昨日は明日の砂丘の総体
円柱の子の刻

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