私の支えの3曲の話

スキな3曲を熱く語る。好きな曲がたくさんありすぎて3曲選ぶのは難易度が高い!なので、勝手にテーマを絞って3曲選んで語ることにした。今回は、水と酸素とこの3曲がないとどうにもならないって思うくらい、日々生き抜くのに必要な3曲の話。

① Sorrow / 松尾太陽

Sorrowを初めて聴いた時、松尾太陽さんの歌声に惚れ込み、そのあまりの気持ちいいハイトーンに夢中になったのと同時に、自分では絶対に至らなかった気持ちの置き所が歌われていることに気がついて衝撃を受けた。サビの部分の歌詞なのだが、こんな方向の優しさというか寛容さに出会ったことがなくて、でも聴いた瞬間に、ああこの言葉があればまだ大丈夫だ、と心から思った。

♬僕たちの今胸を掴むあの歪んだ日々が 今も忘れられないなら ずっと見ていよう、君が飽きるまで

何回聴いても、本当に涙が滲みそうになる。歪んでいることは分かっていても、それでもどうしようもなく胸に残るあの日々。忘れた方がいいとか、いつまでそうしてるのとか、不毛だみたいなこと言われても、無理に忘れないようにしているんじゃなくて、単純な意味で、自然と、まだまだ忘れられないだけなのに。忘れようとする方が私にとっては歪みなのに。そういう、外には絶対に出せない怒りのようなものが自分の中で言葉にならないまま渦巻いていたことがわかる。なんで外に出せないかというと、その歪さは自分が一番理解しているから。その上で「忘れられないならずっと見ていよう、君が飽きるまで」と、そっと差し出される道の寛容さと言ったら、本当に驚いた。飽きるまで、が良いのだ。強い感情は年月と共にそのまま気持ちに沁み込み深く沈んでいて、ちょっとやそっとでは揺るがない。そこから離れるときが来るとしたら、もうそれは私自身がもういいや、とサラッと手放す時しか有り得ない。でもそんな自分は全く嫌じゃなくて、そんなもんだろうなぁ、と自分の中でとっくに折り合いを付けてあるから。だからこの「飽きるまで」の言葉の、ある種投げやりな無関心さと自由さにものすごく救われるのだ。さらに、松尾太陽さんが歌う「飽きるまで」には、不思議な温かさと優しさが宿って、本当に広々とした空とか海を見た時みたいな、妙に受け入れられている気持ちになって本当に安心する。歪んだ視界でよく見えなくなっている世界の色彩を取り戻させてくれるような本当に素敵な1曲だと思う。


② 体温 / 松尾太陽

初めて1曲フルで聴いた時、それまで体験したことのない聴後感に呆然とした。歌声そのものが体温を持っているかのようで。聴くと心が温まる、とかではなくて、歌声から温もりが全身に移ってくるような、聴覚からだけだとは信じられないものすごい温度感がこの曲にはあると思う。そのタイトルの通り、愛おしい人の体温を歌う歌。色んな捉え方ができる歌だと思うのだが、私にとってはもう二度と会えなくなってしまった、それでも何も揺らぐことなく自分にとって一番大切な人への思いの歌だ。思い出の歌、ではなく、思いの歌。

♬並び歩く時が 手のひらの温度が 思い出にならないように

色んな想いや考え、出来事は言葉にして記憶してきちんと思い出として形を成すことができる。でも、具体的な何かがあるわけではない大切な時間や、横にいる人の温かさは言葉にした途端に全く違うものになることがある。そんな言葉にならないはずのものを、言葉で紡がれた歌詞をメロディにのせて歌う。その歌声から伝わってくる質感はたしかに、大切な人の体温、としか思えない温かさで私を温めてくれる。温かいだけではなく、歌声がとても近い感じがするところも大好き。体温を感じられるような距離感。気持ちが繋がってるとか、離れていても通じ合うみたいなこととは全く別の、近くにいるからこそ感じられる体温。遠くに行ってしまったら失われてしまうだろうその温かさを繋ぎ止めてくれる歌声が大好きだ。


③ 霖雨 / 超特急

霖雨。この曲はひとりだけの内側の音楽という感じがする。自分でも普段はあまり意識しないくらい深くて暗いところで響く。終わりの見えない雨の中で立ち尽くすイメージが容易く浮かび、静かで音の少ないメロディは、雨音で遮られている外の音のようで。その雨音の幕の中でひっそりと響くタカシくんの歌声は、冷たい雨で冷えた体の震えと戸惑いが感じられて、聴いているだけでゾクゾクとしてくる。辛い時や悲しい時、心を温めるような曲に支えてもらうこともあるけれど、悲しさや辛さをそのままで美しく表現してくれる音楽に救われることもあるんだと初めて知った。大切な人がいない世界に放り出されて、それでも時間は流れていくから生活や体は変化するけれど、心は同じ時間から動かない感じ。歌詞の美しい言葉と変わらない景色に閉じ込められているような静かなメロディ、琥珀みたいに時間が止まった美しさを感じる硬質なタカシくんの歌声(ライブの時はそこからさらに滲み出る処理しきれない熱情みたいなものも感じられてさらにグッとくる)、ダンサー陣の曲の中に沈み込んだような情感あふれるダンス。ふつうに考えたら救いようのない状態にいるのに、その状態をこんなに美しく描いてくれる曲があること。この曲の仄暗い救済しか届かないこと時があるから、紛れもなく私を支えてくれている1曲だと思う。特に好きなのは2番のAメロ。

♬見下ろした水溜りの中 ずっと思い出が映ってる 切ないほど綺麗な景色に 僕だけ入れないよ もう届かない

まるで自分のことのように感じてしまう、この歌詞に何度も救われてきたのだ。


この3曲がなかったら、生き抜くことはもっと困難になっていただろうと思うほど、とてもとても大切な3曲の話。

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