私的東方創想話レビュウ③

 少しずつでも、いろいろな作品を紹介していくことが出来たらいいなあと思っています。創想話ってなんなのさ? という方は、是非こちらを。


私じゃなかった(作品集227 2.44KB 約1000字)
作者:くろはすみ氏

 蓮子が死んだ。その事実を後になって知ったメリーは呪詛を吐く。「私じゃなかった」と。

 このお話は、秘封倶楽部好きの人にはお勧めが出来ない作品だと思っています。ですが私はこの作品のメリーがとても好きなのです。

 このお話の面白いところは「どこにでも転がっていそうな、聞きたくもない生々しい話を秘封倶楽部で書いているところ」と思っています。
 凡百の社会人になってしまったメリーの独白は、端的に絶望と胸糞の悪さを味わうことが出来ます。ですがどこか「もしかしたらこのメリーと蓮子は実在しているのかもしれない」と思わせるだけのパワーを感じるのです。

 さらっと読める分量ですが、その独白はしっかりと目線をくぎ付けにしてくれます。疲れたときに読むと、より一層の「なんともいえないマイナスの感情」を味わえるかもしれません。面白いです。


リップ・サービス・モンスター(作品集227 7.88KB 約4000字) 作者:灯眼氏

 ドラキュラ、白く照らすブラックライト 真っ暗い闇に光る牙、まるでジャックナイフ(作者あとがきより抜粋)

 「レミリア・スカーレットとは」と聞かれたとき、あなたはどんな彼女を想像するでしょうか。十人十色、そんなレミリアの多様性をとても上手に書いている作品だと思います。中々発想ができないアイデアだなあと、一人で感心してしまいました。
 相手に合わせて姿を変える。その姿はまさにタイトル通りのリップ・サービス・モンスター(口先女)なのかもしれません。ちょっと斜に構えているフランドールも、実はその素養を持っているところも可愛らしく思います。

 スカーレット姉妹の語らいを、そしてカリスマ分を補給したい方には是非お勧めが出来る作品だと思います。


スルー・ザ・レンズ(作品集227 31.05KB 約15000字)
作者:怠惰流波氏

 緑の瞳に映る景色は、どれほどまでに鮮やかなのか。カメラを持った橋姫は、レンズ越しに己を切り取る。

 旧地獄の現況報告業務。その記録係として白羽の矢が立った橋姫と、さとり妖怪のお話です。
 パルスィの独白は淡々としていますが、しかし私の言葉では伝えられないほどに情緒に溢れているのです。そこにパルスィは一切の疑問も、虚飾も、憧れなども持たずに。ただ、正直に世界を見ているのです。

 パルスィの眼から見える景色を一緒に追想し、嫉妬に浸ってみたい、という方にはとてもおススメのできる作品だと思っています。


最後に

 なんやかんやで三本目を書くことが出来ました。これもひとえにワクワクしながら作品を読むことが出来る創想話という場所があってこそだと思っています。
 もし、この記事に流れ着いた方がいらっしゃったら、是非とも書くのも、読むのもお勧めしたいなあというところで、今回は終わりにさせていただきます。最後まで読んでくださった方に感謝を。ありがとうございました。




 

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