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はじめてBARに行った話。

夜に窓を開けて涼しい風を浴びるとき、夏の匂いがすると気分が高揚する。

先日23歳にしてはじめてバーに行ったので、今日はその記録を。

夕方に友人と待ち合わせて、駅近の繁華街を抜けて一本裏路地へと歩みを進めた。携帯に表示された地図を見ながら進むこと5分。金属切文字の店名が黄色がかったライトにぼんやりと照らされていた。意識せずに歩いていたら通り過ぎてしまうくらい、静かな闇夜に溶け込む落ち着いた外装で、換気のためにほんの少し開いた入り口から漏れ出た光だけが、そのお店の存在を証明しているかのようだった。

扉をそっと開くと、お酒の瓶で整然と埋め尽くされた内装に目が吸い寄せられた。8名ほど座ることのできる小さなカウンターと2人掛けのテーブル席が3つのこぢんまりとしたお店で、なんだか秘密基地に迷い込んでしまった、そんな気分。

気さくな女性バーテンさんが1人で切り盛りされていて、すっとカウンター席に案内された。手書きのメニューの1ページ目には美味しそうなフードがずらり。お目当てのお酒より先に見つけたレーズンバターとともに、友人におすすめされたモスコミュールを頼んだ。

店内に流れるジャズとほかのお客さんの会話をbgmに、友人の話を聞くのは心地よくて、はじめの一杯とお通しを出していただくまであっという間だだった。きんきんに冷やされた銅製のマグカップに大きなライムが浮かぶモスコミュールは、ジンジャーがぴりっと効いていて、お通しで出していただいたサラミとチーズとショコラオランジェが、グラスに手を伸ばすスピードをより一層加速させた。

レーズンバターはフランスパンの中央をくり抜いた中にバターが詰められているもので、クラッカーを用意しなくていいから便利なんです、とバーテンさんが笑いながら説明してくれた。美味しいものはカロリーでできてますからね、という言葉から、ひとしきりバターと相性のいい食べ物の話でバーテンさんと盛り上がり、バーでバーテンさんと気軽にお話をする、という自分の中での大人への一歩を軽々とクリアした。

友人はその後ウイスキーを飲み比べていたけれど、もともと甘党の私は甘いカクテルが飲みたくて。バーテンさんに相談してみると、普段はクランベリージュースでつくるシーブリーズを、生のイチゴを潰して作ってみるのはどうですか、とご提案いただいた。
一緒に出してもらった細長いスプーンでくるくる氷をかき混ぜながら、時折苺をすくっては食べる。こんな贅沢があっていいだろうか。

世も更けてきた頃。居酒屋で飲むよりも格段に美味しいカルーアミルクを飲み干した後、最後に何を飲もうかとメニューをめくっていると、1つのカクテルが目に留まった。ミントリキュール、カカオリキュール、生クリームで作られており、バッタの色に似ていることから名前をつけられたデザートカクテル。
そう、グラスホッパーである。
きめ細やかな泡が口の中で溶けて、まるでミント味のチョコレートを口に含んだかのよう。チョコレートに目がなく、某アイス屋さんでは黄緑色のパチパチするアイスばっかり頼んでしまう私にとって、グラスホッパーは、これまで知らなかったことが悔やまれるくらい、びびっときたカクテルだった。

また来ます、という言葉を最後にお店を出ると外はすっかり真っ暗。たくさんお酒を飲んだはずなのに、心地の良い酔い方で、なんだか少し大人になったような気がした。今度は1人で来るチャレンジをしてみようと思う。

ちなみに、今回飲んだカクテルのカクテル言葉は以下の通り。いつかはポートワインを勧められたいものです。

モスコミュール:喧嘩をしたら、その日のうちに仲直りをする
シーブリーズ:海のそよ風
カルーアミルク:臆病、イタズラ好き
グラスホッパー:喜び

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