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「面白さ」の考察「宝石の煌き」

「宝石の煌き」というゲーム

ボードゲームを題材として、「面白い」を考える試み第一弾😆❗️

↑ただし、いつまで続くかは不明(笑)

第一回は「宝石の煌き」です。

すごくマイナー記事ですが、ボードゲームを他の人にお勧めする時の切り口としては需要あるかも?!

「宝石の煌き」のルール概要

 おそらくこの記事を読もうと思った方は知っていると思うので、本当に考察に関連する部分の概要だけです💡

①2〜4人用で10歳以上向けの、カードと宝石チップを使ったゲームです。1人ずつ順番(手番)が回ってきて、自分の番がきたら行動します。

②点数を集めるゲームで、カードには0点以上の点数が付いています。この点数を競います。カードは最初は持っておらず、宝石チップで購入していくことになります。ボーナス点もありますがここでは割愛します。

 買い物って楽しいですよね😋

③自分の番にできることは、カードを1枚買うか、カードを1枚予約して宝石チップを1つ取るか、宝石チップを2つ〜3つ取るかの3択です。取る宝石の種類によって2つか3つかが決まります。また、カードを買うには宝石を支払いますが、カードを持っていると他のカードが安くなるという特徴があります。

④まとめると、「宝石チップを取る(数に限りがあります)→カードを買って点数を増やす」を繰り返し、カードが増えるほどより高価なカードが買いやすくなるという仕組みです。ちなみに誰かが15点を超えたターンでゲームが終了します。

*最初の人が手番を行ってから最後の人が手番を行うまでを「ターン」という単位で表現します。

例)3人で遊ぶ場合:「Aさんの番→Bさんの番→Cさんの番」=1ターン

さてこのゲーム、何が面白さを生み出しているのでしょう?

「宝石の煌き」はあなたのどんな欲求を満たしてくれるか?

 さて前の項目で書いた通り、このゲームの概要は「宝石チップを揃えてカードを買い、点数を集める」という具合なのですが、この行為の中で面白さを生み出している工夫を探っていこうと思います。

 ところで面白さがどのように生み出されるか、という基本的な疑問がありますが、人は欲求が満たされる時に脳内でドーパミンが分泌され、気持ちが盛り上がります。このドーパミンによる気持ちの高揚は「面白い!」に繋がります。

 つまり、面白いと感じる背景には、何らかの欲求が満たされた(又は満たされそうである)という状況があると考えられるので、ここからはゲーム中のどういう部分でどのような欲求が満たされる可能性があるかという点から、面白さを生み出す仕組みを探していきたいと思います。

 1つ目は、宝石を集めてカードを買うという行為です。このゲームでは買ったカードは全て自分のものになり、他の人に奪われることはありません。しかもカードはこのゲームにおいて宝石であり点数にもなるため、最も価値が高いものということになります。これによって、“価値のあるものを得たい、集めたい“という「獲得欲求」が満たされます。

 つまり、このゲームは「価値ある物」をゲームルールによって生み出し、それを獲得・収集させる仕組みによって獲得欲求を喚起・充足させる装置となっているわけです。

 しかも購入する順序やどのカードを購入するかということを考えるのは自分自身です。これによって2つ目の仕組みとして、「自律欲求」という、“他者の支配を受けず自分で決めたい、自分らしく行動したい“気持ちが満たされます。

 この自律欲求の充足は、多くのボードゲームが共通して備えている要素と考えられます。

 ボードゲームをしていると、残念なことに「慣れた人にあれこれ指図されて楽しめなかった」という話を聞くことがありますが、これはせっかく満たされるはずの自律欲求が、他の人からの指図によって阻害されてしまった結果と言えます。

 自分が得意なゲームなどは特にあれこれ教えてあげたくなるものですが、ボードゲームの面白さの一部がプレイヤーが自分で考えて決めるという、自律欲求の充足によって生み出されていることを踏まえると、わかりにくい点を補足したり、考える道筋を手伝う程度にとどめるのが得策かもしれません。

 少し横道に逸れてしまいましたが、このゲームで満たされる欲求はまだあります。3つ目は、目標を達成したいと言う気持ち、「達成欲求」です。この欲求も多くのゲームがターゲットにしている欲求です。達成欲求は目標が簡単すぎてはあまり満たされず、また難しすぎても挫折に変わってしまいます。ある程度自分で計画を立てることができ、時々その計画の遂行が困難に突き当たったりしながら、試行錯誤して打開策や次善策を講じ、達成できそうな雰囲気が出てくる程度のちょうど良い難易度になった時、効率よく満たされます。

 このゲームの面白さの中心には、この達成欲求を刺激する効果的な装置が据えられています。この記事の最後として、このゲームが達成欲求を刺激するために持っている装置について書いていきたいと思います。

絶妙に達成欲求を刺激する装置

 前項で書いた通り、達成欲求は目標が簡単すぎても難しすぎてもうまく刺激できません。では「宝石の煌き」の目標と難易度はどうでしょう。

 目標は15点を集めることですが、目の前に並べられた「購入できるカード」には点数が明示されています。そしてそれらを見る限り、点数の合計を15点まで持っていくために取るべきカードの組み合わせは無数に存在します。さらにゲーム中にカードが購入されると、即座に補充され新たなカードが購入可能になるため、そこに可能性を見出すこともできます。

 少し脱線すると、可能性は希望であり、あと数点で15点に届くような状況で不意にすぐ購入可能な高得点カードが提供されるという可能性は、「運が良ければ勝てるかも」という気持ちを最後まで持たせてくれますし、仮に負けてしまっても、「あの時供給されたカードによっては奇跡的な勝利を手にしていたのは自分かもしれない」という可能性が、挫折感を和らげてくれます。

 話が脇道にそれましたが、目標を達成すための道が複数用意されていることは、プレイヤーに考える余地を与えてくれます。しかもこのゲームの優れている点は、道が複数用意されているものの、それぞれの道筋はある程度明確だという点です。どの宝石を取り、どの順序でカードを購入すると効率的に15点に至れるかを頭の中で考えることができるため、プレイヤーは(多少個人差はあるものの)最適解を検討することができます。

 ここにさらなる仕掛けがあります。プレイヤーが複数いるため、実力が近いプレイヤー同士はやりたいことが被ることになります。つまり、そうしたプレイヤーの選択は、お互い意図せずとも他のプレイヤーの進路を阻む障壁となり、計画の進行に程よい困難を与えてくれます。

 ボードゲームの中には、プレイヤーが他のプレイヤーを意図的に妨害可能となるようデザインされたものも多くありますが、これがあまりに露骨な場合は「不可侵欲求」という、他者に邪魔されたくないという欲求を損なう可能性があります。

 「妨害行為があるゲームは苦手」という人、これを読んでいるあなたにも心当たりがあるかもしれません。

 この点で「宝石の煌き」における妨害は、故意のものというよりも“計画が被ることによる仕方のない結果“として受け入れられやすい形になっています。

 このように、このゲームでは目標達成の難易度が視覚的に分かりやすくかつ、適度な困難性を秘める形になっています。又、3人以上で遊ぶ場合は実力に多少差があったとしても、偶発的な計画の被りや供給されるカードの運による計画遂行性の不安定さがその実力差を緩和してくれる可能性があり、負けることによって優越欲求(相手より優位に立ちたいという欲求)が損なわれるのを緩和するようなデザインになっていると言えます。

 まだあります。計画が被った場合に妨害を受けないためには相手より先に計画を進める必要があります。つまり、計画達成のため次に必要なカードを、より早く購入する必要があるのです。しかし自分の手番では宝石を取るか、宝石を支払ってカードを購入するか、カードをキープするかを選ぶことしかできません。これによってプレイヤーは常に、「目の前にある選択肢からどれを選ぶのが正解か、何を優先すべきか」という葛藤と向き合うことになります。

 葛藤はストレスですが、実はストレスというのは乗り越えることができそうなギリギリのラインで最も人の活力を刺激してくれます。そして計画が達成された際にはその快感を倍増する良いスパイスになってくれます。

まとめ

「宝石の煌き」は、私たちの「獲得欲求」「自律欲求」「達成欲求」を刺激し、満たしてくれます。

 もしかすると達成欲求に関しては、初心者のうちは計画がそれほど明確に描けず、充足度が低いかもしれませんが、ゲームに慣れるほど強く欲求を満たしてくれます。この点で、「獲得欲求」を刺激する仕組みは初心者をうまくカバーしていると言えます。

○達成欲求をうまく刺激する仕組み:①計画の立てやすさと②他プレイヤーの行動によって不意に訪れる計画変更の必要性(計画の不安定さ)による難易度の適正化、③供給されるカードによる逆転の可能性

*達成欲求は実際に達成した場合だけでなく、達成することを想像できた場合にもい刺激されます。その点で①や③は達成想像を容易にすることによって達成欲求を刺激していると言えます。

○達成した際に感じる快感を倍増させる仕組み:常に計画の不安定さがある中、選択肢が複数存在することで発生する葛藤体験

○欲求を傷つけることによる面白さの損失を防ぐ仕組み:妨害を故意ではなく仕方なく発生する出来事に位置づけることによる不可侵欲求の保護

さて、第一弾ということで文章化するのに1日かかってしまいましたが、これからもボードゲームを材料として「面白いとは何か」を考えていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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