サクソフォン奏者のつぶやき①

木下音感協会様からのご依頼で、2021〜2022年の全3回にわたりコラムを掲載させて頂いておりました☺️嬉し

この先一生コラムを連載することは二度とないことと思いますので(爆)、記念にこのnoteに残そうと思います。掲載時のものを、ほんの少し修正しています。

それにしても毎回楽しかったなあ✨


◆さまざまな顔を持つ「サックス」という楽器

みなさま、初めまして。この度こちらのコラムを担当させていただくことになりました、クラシック・サックス奏者の三國【みくに】と申します。全3回の連載予定となりますが、楽しくお読みいただけましたらうれしいです。

早速ですが、ここでおそらくほとんどの方が「クラシック? サックスにクラシックなんて、あるの?」と疑問に思われたのではないでしょうか?

 その疑問のとおり、クラシック音楽を代表するバッハやモーツァルト、ベートーヴェンが生きていた時代には、このサックス(正式には「サクソフォン」)という楽器はまだ発明されていませんでした。この楽器の生みの親であるアドルフ・サックスが、自分の名前から「サクソフォン」と名付け、この楽器の特許を取得したのは1846年。ピアノの詩人・ショパンが亡くなる3年前のことでした。

 それから約200年ほどたった今では、すっかりジャズやポップスのイメージが強くなってしまったサクソフォンですが、実は、発明された当時はショパンに代表されるロマン派音楽の時代だったのです。ちなみに、サクソフォンをオーケストラの編成に初めて加えたのは「幻想交響曲」で知られるベルリオーズでした。現代の「サックス」のイメージからは、おおよそかけ離れた史実かもしれませんね。
 このように、この楽器からいちばんにイメージされる音や演奏スタイルと、クラシック音楽のスタイルとがかけ離れていることは、私も認めざるを得ないところではあります…。
 
* * * * * *

 以前、こんなことがありました。

 知人が日常会話の程度の英語でインタビューにこたえられる音楽家を探していた時のことです。私はごく短期でアメリカに滞在していたこともあり、日常会話なら、と軽い気持ちで引き受けました。

 さて、インタビュー当日。インタビュアーが私のプロフィールを見て、真っ先に
「なぜわざわざサックスでクラシック音楽を演奏するのですか?」
とたずねられました。

 これには少し考えてしまいました。このインタビューは英語でしたし、答える時間も、私のボキャブラリーにも限りがありました。何より、なぜ自分がクラシック音楽を演奏するのかを、私はその時まで考えたことがありませんでした。

そんななかで、なんとか捻り出した答えが――

「クラシック音楽には、音色や音程に関する共通認識があります。私はこの楽器を使って、そこにアクセスするのが好きだから、クラシック音楽を演奏するのです」
というもの。

これには、自分の本心に我ながら驚きました。

 そう、私はサクソフォンでクラシックの音を出すのが好きなんですよね。この楽器のために書かれた初期の作品は、後期ロマン派で魅力的な小品がたくさんあります。もっともレパートリーが多いのは20世紀のフランス近現代の作品ですが、ジャズと融合した楽曲も数多いアメリカ近現代の作品も、他にはない面白さがあります。また、サクソフォンがなかった時代の作品は、編曲して演奏する楽しみがありますね。

 このように、サクソフォンはさまざまな楽曲スタイルにフィットする、懐【ふところ】の深い楽器だと思います。

 いかがでしょう?ここまでお読みくださった方には、ジャズやポップスとはまた違う、この楽器の顔が見えてきたのではないでしょうか?
 もしも、少しでもクラシック音楽を演奏するサクソフォンにご興味を持って頂けましたら、たいへん嬉しいです!

 そしてぜひいつか、世の中が今よりもよくなった時に、演奏を聴いていただけますように。そしてさらに音楽を好きになってくださったら、それ以上の喜びはありません。
 みんなが安心して、好きな音楽を聞きにコンサートホールへ出かける日が、そう遠くはないことを願っています。
(2021年5月/三國 可奈子・サクソフォン奏者)


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コラムは「お教室に通われる生徒さんたちのご父兄に向けたもの」ということことで、こういう時に必ず使用させて頂いているプロフィール写真。これを撮影してからおそらく5年以上は経っている気が…

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