夏祭り

先日小暮は夏祭りに行ってきました。チョコバナナがどうしても食べたくて。お祭り、屋台と言ったらチョコバナナでしょ!というのが小暮の唱える理論です。まあ甘味は正義というのが小暮の信念であり説ですが、それはまた別の機会に。

さて、ときは中学生のころに遡ります。小暮はこんな法則を聞きました。

「このあたりの中学に通ってる子は夏が来る前に恋人を作ってお祭りでデートするらしいよ」

小暮は地元から離れた中学に通っていたからそんなの初めて聞きました。中学生の恋愛なんて相手じゃなくてそのシチュエーションに溺れているだけなんだなあ。部活動や勉強に熱を上げていた小暮には完全に他人事の法則でした。

それからときを経て、先日。小暮は駅からの帰り道で一枚のチラシを見ました。夏祭り開催のお知らせです。コロナの影響で2~3年ぶりの開催でした。

誰かを誘って行こうかな、と疲れた脳みそで一人思い当たる人がいました。それは小学生のときからの付き合いの女の子です。浴衣姿は見たことがないけれど、絶対に似合う可愛い人です。草履でカツカツ歩きながら「ねえ焼きそば並ぼう」と横で囁いてくれるのが容易に目に浮かんで、メッセージを送ってみようと思いました。

しかし、スマホをポケットから取り出す手はすぐに止まりました。なぜなら、彼女には相手がいたからです。しかも、2駅隣に住んでいる人で、呼べばすぐに来られるところにいます。彼女にとっては人生で初めての恋人でした。彼女にとって、お祭りデートするには最適の相手です。小暮はまともに会ったこともありません。

そのとき頭の中で思い浮かんでいた自分の姿はすぐにその顔も分からない人に取って代わりました。首を15度ぐらい傾けて見上げないといけないぐらい背の高い相手できっと恰好は紺や青の着流しを着ています。顔がどうであれ、小暮なんかよりもよっぽど彼女に似合う人です。本当は悪く言ってもいいのだけれど、それは彼女も否定してしまうことになるからそれはできません。悪く言えば臆病、良く言えば優しさです。

当日は緑の提灯が30cm間隔でつられ、赤い幕を掛けられた2段の櫓の上ではゲストのアイドルが昭和歌謡を歌っていました。会場入り口には一直線に屋台が立ち並び、どの店も最後尾が見えないほど列を作っていました。おかげでなかなか先に進めませんでした。

結局、あれからその子には連絡をしなかったけれど、浴衣姿の人を見るとついつい顔を確認してしまいました。見つけて「おー!」と声をかけたい気持ちと、恋人さんといるのを見て誘わなくて良かったと思いたい気持ちと……いろいろあります。……いや、いろいろなくて、ただ会いたかっただけなのかもしれないけれど。

この話にオチはありません。ただ、やり場のない気持ちを発散したかったんです。つまらなかったらごめんなさい。また次回を期待してください。
ちなみに、今回楽しみにしていたチョコバナナは早々に断念しました。鬼のように並んでいて、信念の前に立ちふさがりました。

ということで、今回はこれで終わりにします。先述したように、小暮は臆病だからこの先何か展開があるわけではないと思いますが、また今後思うことがあればここに書き記そうと思います。

梅雨が明け、夏が本格的にスタートしました。小暮はおおむね夏は嫌いではありません。ノスタルジーを感じるいい季節です。読者の皆様もどうか体調だけは気を付けて、またの機会に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?