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肋骨貸す魔法 毎週ショートショートnote
その男は肋骨が透けて見えた。
汚い食堂の前を右に左にとウロウロしている。腹が空いているようだ。
私は彼に声をかけた。
「食わしてやろう」
男は穴の開くほど私を見た。何かされる予感があったのか。
そしてそれは間違ってはいない。
私は左の肋骨が一本足りない。
先だって知らぬ間に魔族の男に抜かれたのだ。そいつから取り返すよりこの男から一本頂く方が早いだろう。
私は彼の手を引き入店した。
「なんでも注文しろ」
彼は安心したのか飯付きラーメン大盛を注文した。
あっと言う間に平らげ、私の食べかけの餃子定食をチラチラ見る。
「いいぜ」
この言葉とほとんど同時に、彼は餃子を頬張る。
肋骨が一本でも足りないと、魔力が弱る。2本無くなると普通の人になる。
つまり我々魔族は人間より肋骨が2本多いのだ。
ところが彼は恩を仇で返した。
私の肋骨を抜いたのだ。魔法を使って。
私はただの人間になった。
汚い食堂で働く私に、年に一度だけ『肋骨借用代金』として男からの書留が届く。
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