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初めての鬼2 毎週ショートショートnote

 ここは、私たちの住んでいる世界とは次元も時間も違う。

ある日、森の木々が赤から、青や紫、ピンクに変わった。季節が動いたのだ。

色の無い鳥が、さえずりながら飛んできた。

「来るよ来るよ、マオウが来るよ」

そう聞こえる。
自分がここにいる事を知られるとは。別の次元から訪れた魔王は警戒する。

彼は父の魔王から、魔王を名乗っても良いと許可を受けたばかりだ。

その時、美しい歌声が聞こえてきた。

「マオウが来たよ、マオウが来たよ」
透明な鳥の大きな声が響く。

現れたのは美しい娘。その歌声は天使。魔王は彼女の前に姿を現す。

「お前の名は?」
「魔王様、私の名はマオウと申します」

「魔王様のお名前は?」

魔王は一瞬たじろぐ。名前など聞かれたのは初めてだ。

「我が名は鬼。マオウよ、私の名を尋ねたからには、お前は私の妻とならねばならぬ。それが、さだめ」

「ここはあなた様の住む次元では無いので、あなた様のさだめは無効なのです」


初めての鬼の求婚は、叶わなかった。


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たらはかにさんの企画です。