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半分ろうそく 毎週ショートショートnote

「私達もあと数年で金婚式だわね」
彼女、美羽さんは、夫の勝さんにそう言った。
「あゝ、長かったような、短かったような」
「ねえ、私欲しいものがあるの」
「なんだい?」
「花が描かれた綺麗な花蝋燭が一本だけ欲しいの。それでこれを半分だけ、私の通夜に灯して欲しい。これが私の最後のおねだり、そしてお願いよ」
「わかった。で、後の半分は私のか?」
「ご名答」
「どっちが先でも、そうするよ」
「私が先だったら、あなた、再婚してもいいわよ」
「ほう、お許しはもっと早くに出して欲しかったな」
勝さんは、面白そうに笑う。

「そうね、そうして差し上げれば良かったわね。だからあなたが先だったら、私も再婚を目指すわね」
「いいとも、今度は理想の男と出会えたら良いな」
「ええ、頑張るわ」

「だが、なぜ花蝋燭なんだい」
「花の絵が描かれたろうそくは感謝の気持ちをこめて灯りをともすと大切な人に気持ちを届けてくれるの。そして私達、なんでも半分こして生きてきたんですもの」


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たらはかにさんの企画です。
お題は「半分ろうそく』です。


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