クッキー 三羽 烏さん企画
青い空に白い雲が浮かんでいた。
ボクは公園に来てみたけれど、誰もいない。
日曜日だからみんなお出かけかな。
ふと見ると、公園の隅っこにあるベンチに女の子が一人座っていた。
誰かなと思ったけれどベンチは向こう側に向いているので分からない。
ボクはブランコのところに行ってギコギコとブランコを揺らした。
すると、女の子がこちらに顔を向けた。
知らない子だった。同じくらいの歳かな。
「ねえ、お菓子食べる?」
女の子が手を振る。
お菓子と聞いて断るなんてあり得ない。
ボクは走ってベンチに向かう。
女の子は小さなカゴの中から、クッキーのようなものを取り出した。
ようなものって言うの変だけど、凄く違和感があったんだ。なんて言ったらいいかわからないけど。その色、初めて見る色だったし。
女の子にお菓子の名前と色の名前を聞いたら
「どっちもクッキー」と答えた。ホントかな。
女の子は、クッキーをボクに2枚渡してくれた。
スーッとする甘いような匂いがした。
ボクが少しためらっていると思ったのか、女の子がクッキーを一口。ポリポリと良い音がした。女の子はにっこり笑う。
ボクは慌てて、クッキーを口に入れた。ポリっという音と一緒に爽やかな味が広がったけれど、なんだか食べたことのない味だった。だけど、それは確かにお菓子だった。
「これ、美味しいね」
ボクは女の子に言った。女の子は嬉しそうに言う。
「これ、私が作ったの」
「ねえ、ここに座りなさいよ」
僕は慌てて女の子の横に座った。お菓子のお代わりを貰えるかもと思いながら。
「私、ここに来たの初めてなの」
「どこから来たの」
「うんと遠くからよ」
「……」
「ねえ、ここって空が青いのね。すごい!」
女の子は汚れた空気のところから来たんだとボクは思った。
「ねえ、あの浮かんでいる白いものは何?」
「え?雲のことを言ってるの?」
「雲!そうなんだぁ」
女の子はうっとりと空を見上げたままだ。
「雲って動いてるのね」
「風が吹いているからね」
そう言いながらもボクは女の子は変だと思った。もしかしたらこの子は病気?それとも。
「私の星も青い空があったらいいのにな、宇宙が広がっているだけなんだもの」
「どこから来たの」
ボクはさっきと同じ質問をした。
「うんと遠くからよ」
女の子も同じ返事を繰り返す。
ま、いいか。
だって女の子はボクに、クッキー色のクッキーを全部くれたんだ。
とても良い日曜日だったよ。
了 975文字
『新色できました』に参加させていただきます。
三羽 烏さん、よろしくお願いいたします。