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ふりかえるとよみがえる 毎週ショートショートnote

最近何かに見られている気がする。振り返っても誰もいない。

ある日、深夜にコンビに行った。
すごく炭酸水が飲みたかった。
僕はそのまま飲むのが好きだ。

帰る途中、例の気配を感じた。振り返っても誰もいないと思いながら振り返る。

いた。

それは、ひと月前に四十九日の法要を終えた僕のじいちゃんだった。

「じいちゃんだったんだね」
僕は駆け寄った。

「何度も振り返ったけど、初めてじいちゃんが見えたよ」

「夜にならんと見えんようじゃな」

「ばあちゃんは元気?」
「元気だよ、そのばあちゃんに叱られた」

「なんで?」

「お前に頼んだ涙鉛筆じゃがの、一本足らんかった。ワシとばあちゃんの結婚記念の鉛筆が無いんじゃよ」

「ごめん、じいちゃん。一度落としてバラバラになった事があったよ。探すよ。あったらどうしたら良いの」

「寺か神社でお焚き上げをしてもらってくれ。頼んだよ。達者でな」

振り向くと甦る事は、もう二度と無いだろう。

「じいちゃーん」
夜空に向かって手を振った。



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たらはかにさんの企画です

あちらの世界に行ってしまった人が
元気にしているといいな、そう思うのは
変じゃ無いですよね。