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ノックの音が

かすかに
ノックの音がしたような
気のせいかな

ノックの音?大きく響く
誰かいるの?
用があるなら
インターホンを鳴らしてよ

今度は間違い無いのかな
乱れたノックの音がする
そっとドアスコープを覗いてみる

誰も居ない、何も無い

またまたノックの音
思い切ってドアをそっと開けてみよう
そおっとね

あ、カラス

カラスと、目が合うピッタリと
カラスは慌てて飛び立った
しこたま慌てて飛び立った

ここはマンション、端っこ部屋
カラスがわざわざ
会いに来るとも思えない

お前、ただの時間つぶしなの?
お前、ただのオチョクリなの?

それともそれとも

本当に用があったのかな
何かお願いしたかった?

またおいで

私に出来る事なら助けてあげるよ
恩返しは期待してないからね

**
帰宅した連れ合いにカラスの訪問の話をした。
彼は心当たりがあると言う。
出掛ける時、カラスに帽子を持って行かれそうになったと話しを始めた。

「だからカラスはお詫びに来たんだ」そう彼はうれしそうに言った。
 
「本当だね、私もそうだと思う」
私は、そんな馬鹿なと思いながら、心にも無い事を言いながら話を合わせた。


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この話は数年前の実話です。
カラスの訪問は、その後ありません。