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ゲジ眉物語(青ブラ文学部)

迷っている。
僕のゲジゲジ眉を剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。
はっきり言って、この眉は嫌いだ。好むと好まざるとにかかわらず、父譲りのこの眉を剃り落としたいが、学校があるからマズイ。それに街を歩けば、声をかけて来るお兄さん方があるかも。因縁でもつけられ、仲間に入れと言われたらどうする?
で、毎回同じ事を繰り返し思い、結論を延ばす。

ある日、僕は一人で繁華街を歩いていた。
後ろから声をかけられた。振り向くと、さっきすれ違った綺麗なお姉さん。

「あの、私のカットモデルになってくれないかしら」
僕は思わず、頭に手をやった。
「あ、ヘアカットで無くて眉カットなの。と言うか、眉を整えるって事よ」
綺麗なお姉さんの頼みを聞かないわけにはいかない。

「もし、今、時間があるなら是非お願いしたいのだけど。モデル代は千円でどうかしら?」
持て余している眉を手入れしてくれて、しかもこんな綺麗なお姉さんに。しかもお金までもらえるなんて、ラッキー!

お姉さんについていくと、アレッ、母親の行きつけの美容院だった。
「あら、坂本さんとこのぼっちゃん、大きくなられて」
ママさんは、僕を覚えていた。眉毛のせいだ。
僕は曖昧に頭を下げた。

「カナ、あなたの最初のお客様?」
「いいえ、お母さん。私の最後のカットモデルさんよ」
「そっか、卒業試験ね。難しそうね」

二人の会話を聞いて、ちょっとまごついた。大丈夫かな。まあ、失敗しても彼女だから良いか。それにずっと僕の事、忘れないよね」

カナさんは手際よく僕のゲジ眉を上手くカットしてくれてゲジが気にならないほど整えてくれた。凄い!我ながら素敵だ。

「どうかしら、気に入ってくれた?」
心配顔のカナさん。
「凄いです。ゲジ眉で良かったと初めて思いました」
僕は、1,000円をカナさんに渡した。
「?」
カナさんの驚いた顔。それも可愛い。
で、僕は言ったんだ。
「僕はカナさんの最初のお客です」
ってね。

791文字


山根あきらさん
今回、参加させて頂きますね。
どうぞよろしくお願いいたします。めい

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