オラオラするTシャツ手触り 毎週ショートショートnote
Tシャツがオラオラと言うと言えば、あなたは信じてくれるだろうか。そのTシャツは、そっけないほど普通の白いTシャツ。
古着屋のオヤジは、私が手に取って眺めていたら、すかさず現れて「500円でいいよ」と言う。
手触りも良い。シンプルさが気に入り購入した。店を出ると、オヤジは直ぐに店を閉めて、更にシャッターまでも下ろし、ついでに『しばらく休業致します』と書かれた紙まで貼った。
今思えば変だよな。
そのTシャツを着ると、『誰でもいいからかかって来な』みたいな気になる。小心者の私がだ。
ある夜、風呂から上がりパジャマ代わりにそのTシャツを着た。
力が漲る。気が付くと私は「オラオラ」と言いながら走っていた。いや走っていたのは私だが、「オラオラ」言っていたのはTシャツだ。
Tシャツに私は乗っ取られたのか。これからどうなる。
気が遠くなるほど走った。気が済んだのかTシャツが私に「ありがとう」と言って消えた。
Tシャツの手触りだけを私に残して。
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たらはかにさんの企画です。
今週の裏お題『オラオラするTシャツ手触り』です。Tシャツを着て、「オラオラ」と言いながら、きんと雲に乗っている悟空しか頭に浮かびませんでした。