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オノマトペピアノ 毎週ショートショートnote

古いピアノには、魂が宿る。そんな話を時々聞く事がある。弾き手の想いをピアノが一番知っている事を思えば納得するしかない。
我が家には祖母の時代からのピアノが半分物置と化した一番奥の部屋に置かれている。

母はピアノよりフルートを好み、その道を歩んだ。姉はバイオリン、弟はパーカッション。父と私は音楽に興味は無く、ひたすら外に出て、スケッチに勤しんだ。

私も幼い頃はピアノを習ったが、上達もせず好きにもなれなかった。

なので、祖母が亡くなってからはピアノを弾く者はなく、ただそこにあるだけだったのだ。

珍しく、私と父だけが留守番をしていた。楽器の音がしない静かな午後。

私と父はスケッチを広げて、お互いに批評を始めた。
その時、ピアノの音が聞こえてきた。お隣からでは無い。ウチのピアノだ。誰かいるのか?まさかね。

奥の部屋を開けた。
誰もいない。ピアノがピアノを弾いている。一音一音、確かめるように。

ポロンポロンポポポンポロン。
切ない音だった。


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たらはかにさんの企画です。
子どもの頃、ピアノは習ったことがありますが、長続きしなかった。もっと頑張って続ければ良かったと思います。今更ですが。



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