見出し画像

一方通行風呂 毎週ショートショートnote

私の家は旅館。
両親は私の事は松子さんに任せっきり。だから私は松子さんに育てられたようなもの。
松子さんは、ちょっと不思議な人だけれど、とても優しいお姉さんで私は大好き。

私が12歳になった時、松子さんは言った。
「私の本当の名前は、ジュジュラというの」
『松子』は働くときの名前だと知っていたけれど。ジュジュラって外国人の名前みたい。でも詳しく聞いてはいけない気がした。

松子さんは、私の誕生日のお祝いに不思議なものを見せてあげるって言ってくれたの。

私と松子さんは大露天風呂に行く通路を歩く。

松子さんは、露天風呂への木戸を開ける。
でもそこは見慣れた露天風呂では無かった。
うちのお湯は白濁の湯のはずだけど、そこは青い海の色だった。しかも舐めてみると本当に海だと思った。温泉特有の匂いと湯気も今までと変わっている。

私は松子さんと温泉を楽しんだ。温泉を出たけれど帰りの通路が消えていた。
「帰りはこうするのよ」
松子さんは呪文を唱え始めた。


410


たらはかにさんの今週のお題〈表〉
『一方通行風呂』です。
よろしくお願いいたします。



#毎週ショートショートnote