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ネズミとネコ シロクマ文芸部

かき氷屋はネズミたちにとって天職だと思われた。
ネズミの前歯は削り続けないと一生伸び続けるのだ。
かき氷屋は夏だけの店で、冬は冬で別の仕事がある。
氷は人間の所から手に入れている。場所は企業秘密なので悪しからず。
「人手(鼠手?)があればもっと削れると思うのだが」
ネズミのリーダーはため息混じりに呟く。

そこへ現れたのは旧知のネコ。
「私の爪もお前の前歯のようにほっておくと大変なことになる。お前の店を手伝わせてくれ。もちろん給金はいらない」
ネコの申し出を有難いと受け取るか、下心アリと思うか、そこが難しい。
ネコとは気まぐれな生き物だからな。
しかし、文字通りの猫の手も借りたいのは事実だ。

リーダーは仲間たちと相談して、ネコに手伝ってもらうことにした。

ネズミたちは前歯で氷をガリガリ。ネコは爪で氷をガリガリ。リズムよく仕事が捗る。かき氷も飛ぶように売れる。

最初はうまくいっていたが、ネコは気まぐれ。いつの間にか姿を現さなくなった。リーダーはネコがどうしているのか確かめに行った。

ネコはかき氷を食べていた。
人間から食べさせてもらって、喉をゴロゴロ鳴らしていた。
『お前、仕事はどうした!』

「飼い主が『猫の爪とぎ』っていうアイテムを買ってくれたんだ。悪いね」

リーダーは馬鹿らしくなって仲間の元へ帰って行った。
仲間たちは息巻いてこんな提案をした。
『猫の爪とぎ』を奪って僕らの『前歯とぎ』にしてやろうぜ!」

ネズミ達は即行動に移したようだ。
それから増々ネズミとネコは犬猿の仲になったそうだな。


おしまい 




小牧部長、よろしくお願いいたします。
今週のお題は「かき氷」で始まる小説・詩歌・エッセイなどです。


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#ショートストーリー