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白い歯
僕は歯が丈夫で虫歯ひとつ無い。良い歯のコンクールで優勝した事もある。勿論、理想的な歯並びだし、歯も白い。
この白い歯は今では生活の糧の一部分でもある。僕の家は貧しい。
僕はハンドモデルの中の、歯のパーツモデルなのだ。
勿論、仕事はたまにしか無い。
でも、いつ声をかけられてもイイようにスタンバイを意識しておかなければならない。
そんな僕にも、彼女ができた。
僕と同じ高校の1年生。いっこ下だ。
近所の子で、幼馴染でもある。
ある日の夕暮れ時、彼女、美佳は僕を驚かせた。
「ね、私とキスして欲しいの」
「な、何だよ、いきなり」
「私のクラス、半分はキスの経験があるってわかったの。だから…」
「ファーストキスは、生涯で一度だけだから、もっと大切にしろよ」
「わかった。その時は、相手は圭君であって欲しい、忘れないでね」
嬉しいけれど困ってしまう。
もしキスをしたら、虫歯菌がうつる事もあるらしい。
生活の為の白い歯か、美佳とのキスか。
どうするのだ、おれ!
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圭君の歯が羨ましい。