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眠り薬 青ブラ文学部

皆様ご存じの眠り姫。
100年の眠りから姫が目覚めたのは、王子が口づけをしたからだと思っていないかしら?そうです、タマタマなんですよね。姫の呪いは初めから100年の間眠るというものでしたから。王子が現れなくても、姫は目を覚ましたと思われます。でもそれではお話としては面白くありませんものね。

姫にかけられた呪いとはいったいどのようなものでしょうか。それは、あなた、薬に決まっていますでしょ。眠り薬に他ならないと思いますのよ。100年間も効果があるなんてかなり強烈な薬ですわ。その間、姫は16歳のままの姿で眠って、目覚めたのですから、現代の科学では説明できませんわよね。そう思われますでしょ?
眠り姫はただの童話だとお笑いになるかもしれませんが、真実は案外単純なものだと皆様ならおわかりいただけますわね。

我々はこの難問を解き明かしましたの。
詳しい事は申し上げられませんが。現代では手に入らない成分がありますので同等のものは作れません、ですが現在不眠症で困っておられる方々の悩みを解消できる眠り薬を開発できましたの。しかもかなり画期的ですのよ。

私たちは眠っている間にも劣化、つまり老化していますの。毎晩8時間眠るとして一日の三分の一は老化しないということになるのです。この眠り薬を使えばです。
10年後、どれだけ他の人と差が開くでしょうか、楽しみですわね。

まだ世に出る前ですので、特別に皆様に先行販売をと考えております。世に出れば、手に入れるのは至難であると思われます。こう申してはなんですが、かなり高価な薬である事は申し上げておきます。
本日お招きさせていただきました皆様はそれなりの方々です。ごめんなさい、下世話な事を申し上げてしまいました。お忘れくださいませ。

先行販売に踏み切りますのは、日ごろ大変お世話様になっております皆様へのご恩に報いたいという思いからです。くれぐれも口外なさいませんように。
本日はお試し用にご家族の分も含め、眠り薬をお配りいたします。皆様のご使用感などのご意見もお伺いいたしたく、よろしくお願い申し上げます。もし、お気に召しましたら日を改めて先行販売会をいたしますのでお買い求め頂けたらと思います。それでは皆様、またお会いいたしましょう。


その夜、多くの富豪の屋敷が窃盗団に襲われた。


山根あきらさんの『青ブラ文芸部』の企画です。
今回は『眠り薬』のお題で参加せて頂きました。
よろしくお願いいたします。めい



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