マガジンのカバー画像

毎週ショートショートnote

212
たらはかにさんの企画です。410文字ほどの世界。お題は毎週日曜日に出されます。
運営しているクリエイター

2023年3月の記事一覧

ポポパポぺピアノ 毎週ショートショート note

宇宙からやって来たポポとパポぺは困っていた。地球に用があったわけではないが、帰れなくなった。突然の不運で宇宙船は激しく損傷し使いものにならない。連絡手段も無くなり、もはやこの地球で生きていくしか道は無い。 そんな二人がいるのはある王国。ちょうど王子の誕生で、国を挙げての祝賀ムード。王女四人が続いた後なので王様は跡継ぎの誕生をたいそう喜んでおられた。 二人の服装が人目を惹き、外国の使者と間違われ、お城に招待されることとなった。ポケットに偶然残っていた星屑をお祝いの品とするこ

オノマトペピアノ 毎週ショートショートnote

古いピアノには、魂が宿る。そんな話を時々聞く事がある。弾き手の想いをピアノが一番知っている事を思えば納得するしかない。 我が家には祖母の時代からのピアノが半分物置と化した一番奥の部屋に置かれている。 母はピアノよりフルートを好み、その道を歩んだ。姉はバイオリン、弟はパーカッション。父と私は音楽に興味は無く、ひたすら外に出て、スケッチに勤しんだ。 私も幼い頃はピアノを習ったが、上達もせず好きにもなれなかった。 なので、祖母が亡くなってからはピアノを弾く者はなく、ただそこに

イカ室たぎった 毎週ショートショートnote

イカ漁は、最近では最も不漁だった。どこかの国の大型船がゴッソリ獲っていくのが大きな原因だ。 最近、ある水産会社のイカ室には、イカだけでなくタコも保存されるようになった。 イカ以外にタコの漁獲高も減少している。 イカ室とタコ室を二つとも稼働させるのは不経済なので、タコはイカ室に移されたのだった。 イカはタコと一緒に保管されるのがイヤで仕方がない。 タコもまた、イカと名のつくイカ室に保管されるのは、居候のようで気に食わない。 イカとタコはそれぞれに水産会社に抗議するが、

理科室まがった 毎週ショートショートnote

珍しく早朝に学校に行った。 廊下を歩いていると、我が校の制服では無い転校生らしい女の子が迷っているようだ。 彼女が早速声をかけてきた。 「あの、職員室はどこですか」 「あ、そこの理科室まがると階段があるので、2階まで行きます。渡り廊下があるので前に見える棟に行き、階段で一階まで降りたら、左に曲がったら渡り廊下が…」 「あの、案内していただけませんか」 彼女は益々不安そうに僕を見た。今、彼女は僕だけしか頼る者がいないのだ。なんて素敵な気分。 「良いですよ、こちらです」

星屑ドライブ 毎週ショートショートnote

私は、最新の宇宙船で遥か彼方の星々を巡る旅をしている。危険な星、情報が無い星は近づかず、定められたロードを利用して旅を楽しんできた。 ある日、モニターに見た事のない美し過ぎる星が映し出された。まるで天使の棲家ではないのかと思うほどの優しい光を放っている。 どんな人達が住んでいるのだろう。 私は情報の無い星に、吸い込まれるように向かった。 着陸すると、宇宙船の周りに集まって来たのはモグラに似た人々。お世辞にも美しいとは思えない。 しかし、彼らは歓迎してくれているようだ。安

だんだん高くなるドライブ 毎週ショートショートnote

続きにしましました。↑ 不思議ドライバーの彼から「最後の空のドライブになる」と、いきなり告げられた。 私は不思議ドライバーになるべきか迷う。 不思議ドライバーになってもならなくても、彼とは二度と会えないのだ。 どちらにしてもお互いを忘れてしまう。 抗えない事なのか。 彼もまた、過去に愛しい人を忘れてしまった事があるのかもしれない。 不思議ドライバーは悲しさと諦めの中で飛んでいるのか。いや、それさえも気づいていない気がする。 彼と飛ぶ最後の夜に。 私は彼の手をいつもより

下道一組 毎週ショートショートnote

クリスチャンの私は、仏教徒の両親を持つ彼女に恋をした。 江戸時代でも無いのに、私の求婚に彼女は戸惑いを隠せない。 そう、両親が宗教を理由に、私との交際自体にも反対している。 あなたを外道と言うのだと、彼女は泣き泣き訴えた。 時代錯誤と切り捨てたいところだが、愛しい人の両親だと思うと強引な事もできない。 とにかく直談判あるのみ。何度も家を訪ねたが扉は開かず。 そんな噂は彼女の両親が敬っいる住職の耳にも入った。若い二人を不憫に思われて、一計が講じられた。 住職は定例の講

ダウンロードファーストクラス 毎週ショートショートnote

私の学校は学力優先。クラス編成も成績順のクラス分け。1組はトップクラス。ファーストクラスと呼ばれる。 私は万年4組。このくらいで丁度良い。 普通の学校と違い、半年毎にクラス替えがある。勿論成績順。 私達には面倒なだけだが、ファーストクラスの生徒には切実な問題。1組で無い自分などあってはならない。そう考えている生徒がほとんどなのだ。 私の幼馴染の律は1組だけど、もうイヤだと言っている。クラスメイトはライバルでしか無い。もっと高校生活を楽しみたい、クラブにも参加したいと。

アルプス笑点かい? 毎週ショートショートnote

ミウは日本アルプスが見える街に住む明るく元気な少女。 彼女は幼ない頃から『アルプス一万尺』の歌の小槍と言う場所に行きたいと思ってた。 ミウは地元の大学に入学し登山部に入部。手近な山に登って経験を重ね、なんとか槍ヶ岳登山の同行を許された。 だがミウは交通事故に遭遇してしまったのだ。 足を骨折してしまった。今後、登山は諦めるようにと医師に告げられミウは悲しみに沈んだ。 気がつくとベッドの側に亡くなった祖母が。 祖母は笑顔で言った。 「ミウ、好きなのはアルプス笑点かい?」 そ