チャリンチャリン太郎 毎週ショートショートnote
お貰いさんを見かける事があった。戦後、大勢の国民がまだ貧しかった頃には。
ボロボロの敷物の上に、ひどく粗末な着物を着て、髪は洗った様子は無く、顔はいつもる下を向いたままの彼。
彼はチャリンチャリン太郎と呼ばれていた。
彼の前に置かれた空き缶の中には、何枚かの硬貨が入っている。
空き缶に小銭を投げ入れられた枚数と同じ数だけ、チャリンチャリンと言うのだ。
通りすがりに、小銭を投げ入れる者をじっと彼は待っている。
私は一度だけ、缶に小銭を入れた事がある。
父と外出した帰り、