マガジンのカバー画像

毎週ショートショートnote

212
たらはかにさんの企画です。410文字ほどの世界。お題は毎週日曜日に出されます。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

ポケット大増殖 2 |毎週ショートショートnote

僕のポケット、ドラえもんのポケットと繋がっていると良いのに。 「その願い、叶えてあげよう」 『だ、誰?』 「ポケットの精だ。君はポケットを大事に使ってくれるので、お礼をしよう」 「ええっ!」 「君のポケットの中はいつも清潔なハンカチが入っている。お菓子の食べかすも、ワケの分からないものも入っていない。ポケットに手を入れて歩かない。大事にしてくれて感謝だ。 だから、ドラえもんのポケットの中を探検させてやろう」 「それ勘違いですよ。僕はハンカチを使わずズボンで手を拭く

ポケット大増殖|毎週ショートショートnote

僕はママに頼んだ。 「洋服のここ、破れたから新しいの買ってよ」 ママは、黙って破れを繕ってくれたけど。 「こんなの恥ずかしいよ」 するとママは、繕った所にきれいな布を使ってポケットを縫い付けた。 繕った所が見えなくなったから、まあ良いか。 次の日、学校に行くと男子のアイドル、サリちゃんが 「センスいいね、私もポッケ大好き」と言って誉めてくれた。嬉しくて舞い上がる。 次の日、何人かの男子は洋服にポケットを縫い付けてきた。 また、サリちゃんが 「うぁあ、ポッケが増えて、何

神様時計 2 |毎週ショートショート note

大きな古時計が僕の家にある。 勿論もう動きはしない。 だが時刻を知らせる以外に、その時計にはまだ役目がある。ただ、人間の為では無く、神様の役にたっているのだ。 その事を知っているのは僕の家族だけで、代々受け継いできた秘密だ。 この時計は、神様が天と地上を行き来する為の出入り口だ。 我が家では、長い間この時計を敬い『神様時計』と呼んでいる。 だが近頃、父の顔色が悪い。父にわけを聞いた。 「最近、神様時計を利用しているのは神様だけでは無いようだ。いやな予感がする」

神様時計|毎週ショートショートnote

私が中学生になった時、お祝いに買ってもらったのは初めての腕時計。大抵の子がそうだった。 もう外にいる時、見知らぬ人に 「今何時ですか」と聞かなくてもいいし、バス停の前でオロオロしなくても良いのだ。 大人への階段を一段だけ上がったような気がして嬉しかった。 時刻を知るには、腕時計は無くてはならないアイテムだった時代。特に田舎ではね。 大人になるまで大切に使った腕時計。 もうネジを巻いても動かない。寿命が尽き、時計とお別れの日が訪れた。 私は腕時計を丁寧に磨き、ありがと

ぴえん充電 2 |毎週ショートショートnote

最近、美艶充電器なる物が発売された。 その商品は人の美に関するDNAを刺激し、その人に潜在する美を余す事無く顔面に出してくれる。ただ、時間制限があるので充電が常に必要とか。 欲しい!でも高額、罪な製品。 私は美艶充電器の会社から、涙の提出を依頼された。200mlの涙を提出すれば五万円の報酬。 報酬は魅力だが、涙が出る程おかしくも悲しくも無いから泣けない。 ここで救世主の登場。 超小型の、ぴえん充電という製品。 充電後、耳の裏に装着する。使う時は「ぴえん」と言うと涙

ぴえん充電|毎週ショートショートnote

かにさんからの今週のお題の発表があった。今回はびえん充電。 鼻炎充電?美艶充電? まあ、書き始めた。が、かにさんの記述に、「びえんはもう古い?」と、あったのを思い出した。おかしいと気づいた。メガネの曇りを拭き、もう一度確認すると、びえんでは無く『ぴえん』だった。が。 私は「ぴえん」と、口にした事も無いし記述した事も無い。 泣く、と言う意味なのは知ってはいたが。 おばあが、ぴえんと言うのはちと恥ずかしいが、書くのもどうだろうか。 どうする、私。ぴえん充電と言うお題。 今回

読書石けん|毎週ショートショートnote

久しぶりに、華やかな街を歩く。 その時、今時珍しいサンドイッチマンに出会った。前と後ろにサンドイッチボードを取り付けている。 宣伝文句は前に『読書』後ろに『石鹸』のメッセージ。それだけしか書かれていない。 彼を呼び止め、チラシを受け取った。 ある出版社の 【読書をして、石鹸をもらおうキャンペーン】  書名は『慌ただしい泡』 何だか分からないが、惹かれるタイトルだ。 この本を購入すると応募シールを受け取れる。それをハガキに貼り投函すると、抽選で石鹸が当たるようだ。