紅葉鳥(シロクマ文芸部)
「紅葉鳥?古の名など、どうでもいいわ。鹿を鳴き声だけで勝手に鳥にしてしまう昔の人の感性は分からない」
彼女は独り言のように言う。
「そうだよな」
彼も同調する。
「彼らは孤高の生き物なのだ。たとえ仲間と行動を共にしていても、私は私だと達観しているように思える」
背の高い彼と、髪の長い彼女。かなりの人混みの中で埋もれている二人。離れ離れにならないように手を繋いではいるが、二人はその事さえも気づいてはいないのかもしれない。
ここ奈良公園の紅葉は、見ごろには少し早い。
二人は奈