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ショートストーリー

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#地球温暖化

氷の坊や(140字小説)

氷の坊やが帰って来るよ お母さーん ボク帰って来たよ 私の坊や おかえりなさい 今度の旅はどうだった 早く帰れたね お母さん 話してあげるよ 氷の世界はきれいなんだ 風の話もたくさん聞けた だけどね 氷達は溶け始めたよ 少しずつ ボクも小さくなっちゃった ボクのお母さんは海なんだ ボクはお母さんの中に戻るんだよね 140文字 南極の氷が溶け出したら、水位が上がり被害を受ける場所が増えていきます。氷の坊やが海に帰るのは、現実にはメルヘンではないのですが。

にっちもさっちも

小綺麗な部屋。  ここは準備室というか、楽屋と言うか。 若い女が二人、静かに時を過ごしている。 片方の柔らかい眼差しの女が、燃える瞳を持つ女に話しかける。 「この冬は、いつもと違って心が騒ぐ」 燃える瞳は少し意地悪な気持ちで、こう言った。 「あなた、冬彦に恋をしてるでしょ?」 「何でわかるの?」 柔らかい眼差しは狼狽える。 「あなたの前任者にした事を、冬彦はあなたにもしたって事よ」 そして、更に続ける。 「彼は自分の舞台、出演時間を延ばしたいのよ。少しでも