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ショートストーリー

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2023年4月の記事一覧

黒猫(ショートストーリー)

ある日、黒猫を見た。 結構大きな猫だった。 私はイラストやアニメに描かれる黒猫は好きだけれど、本物は少し怖い。 鋭い眼差しで、こちらの心の奥底を覗かれているような気がするのは私だけだろうか。 それから1週間ほど過ぎた時、私はまたあの黒猫に出会った。と言うより黒猫が私の後を歩いていたのだ。 私は気配を感じ、ふと振り向いた。黒猫は私が振り向く事を想定してなかったようで、一瞬猫の目が泳いだ。 「うちでは飼えないよ」 思わず声をかけた。 黒猫は姿勢を低くし、私を上目遣いで見据え

小さなキツネ(ショートストーリー)

海を見ているのは小さなキツネ。 お月様がとても大きく、とても明るい夜。 お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも眠っています。 夜ひとりで外に出たのは初めてでした。 「お月様」 小さな声で呼んでみました。 するとお月様の光が少しだけ明るくなりましたよ。 風が小さなキツネに声をかけます。 「ボクと遊ぼ」 でも風は小さなキツネが答える間もなく、通り過ぎて行きました。 お星さまは、たくさんの友だちがいるようです。 皆んなでチカチカ、ピカピカとお話をしているみたい。楽しそうですね。

コーヒータイム(ショートストーリー)

そう、誰にでも恋の一つや二つあったでしょ。私にだってあった。ずっとずっと昔のことなのかしら。でもこんな話、信じてもらえるかしらね。まあ、コーヒーでもいかがかしら。私のコーヒーはちょっとしたものよ。 私には付き合っている人がいた。優しい人だった。一生懸命私を愛してくれた。でも彼は、私と同じくらい森が好きだと言ったの。  だから一緒に森で住もうって。でも私は……。すると、彼は私の前から姿を消した。 私は、彼を探して森を彷徨った。そして私は、森の中で迷子になってしまったの。心細