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ショートストーリー

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2022年11月の記事一覧

冬の精『詩』

地味なピンクのあの帽子 毛糸で編んだあの帽子 毎年冬が近づけば 頭にチョコンと載せてやって来る おばあさんがやって来る 毎年毎年待ってるの  おばあさんに出会える日 冬の訪れ感じる頃に 微笑み交わすそのために おばあさんは私かも 今年はきっとわかるはず 毎年毎年そう思う 冬の精の証なの おばあさんのあの帽子 冬の精がおばあさん 知らないわよね誰だって 雪のように儚げで 溶けてしまいそうな女の子 おばあさんも若い頃 そんな日々があったはず 私はずっと待っている

本当です #荒ぶりポエム

わたし 嫌いなの そう言うと みんな言うのよ ウソぉって   ホントはダイエットね わたしの姿を見ながらね そう言うの   嫌いだと オカシイの 嫌いだと ヘンなの 次に言うのも同じなの カワイソウ カワイソウ 人生の半分 損してる 環境が変わるたび 友達が変わるたび 同じ事の繰り返し ケーキバイキングに みんなと行って 証明させられた ガマンできるはず無いってね チーズケーキ一をひとくちだけ 涙目のわたし やっと信じてくれたけど べつにいいじゃんねえ ほっといて欲

本当は #荒ぶりポエム

あんたさあ バッカじゃないの いいかげんにしなよ 自分の都合ばかり タラタラ言ってさあ 何か変わった? アホらし あんた いくつになったんだっけ ねえ 考えてみなよ あんたの思い 複雑だよね だからってさ あの態度 いただけないよ いい歳してさ わかってるだろ  本当は とまあ私  自分で自分を叱るの この歳になればね 誰も叱ってくれないの 怒られる事はあるのだけれど 悲しくて 寂しくて 切なくて そのくせ 自分に腹が立つ そんな私 愛しいの だから たまにはひどく

永久就職の実態(SS 260文字)

昔むかし私達二人は、互いに際どい歳になったので自分にも世間にも妥協して結婚を決めた。 新しい家族として生活をスタートしてすぐに、彼は私にこう言った。 「なんで、私と結婚する気になったのか知らんが。なんで、私がお前と結婚する気になったか教えてやる」 「なんで?」 「黙っていたが、私は鼻が悪い。臭覚はかなりよろしくない。だからガス漏れが発生しても、気づかないと思う。食品が腐っていても」 「それが怖くて?」 「そう」 私は高性能のガス漏れ警報器として買い取られたらしい。

黒猫ジジのハロウィン

ここ、動物のタレント事務所は、夏になると黒猫タレントが引っ張りだこになる。 言わずと知れた、ハロウィンの写真撮影の追い込み。 事務所の商標は、魔女の宅急便のジジによく似た黒猫になっている。魔女の宅急便が上映されるより前からなので商標はジジではないのだが、殆どの人は商標はジジだと思っている。事務所はわざわざ否定はしない。 しかも、黒猫タレントにジジと名前をつけている。今のジジは何代目だろう。ジジの名は霊験あらたか。 そんなわけで、ジジは猫タレントの中ではダントツの稼ぎ頭。