石の声(ショートストーリー)
隕石だと思った。空から落ちてきたから。でも、燃えてないし熱くもない。
拾ってみた。ほんのり、温かい気が。
焦げてもいないし、重くもない。隕石ではないようだ。でも、なぜか惹かれる。宝石でも貴石でもないのに。
優しい色合いが私の気をひく。さわり心地も滑らかで、いつまでも触っていたくなる。
こう、なんて言ったら良いのか、懐かしい思いに包まれるのだ。
この穏やかな満ち足りたような気分を表す言葉はあっただろうか。
私は石をジャケットのポケットに入れて、ポケットの上から指をそっと添え