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ショートストーリー

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短い創作小説を置いています。
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2022年8月の記事一覧

妹(ショートショート)400文字

妹が言うの 自分の中に誰かが居て とても窮窟だって え、彼氏なの そう聞いたの私 違うのよ 悲しそうに そう妹は言ったわ じゃあ誰よ 私は投げやりに尋ねたの 妹は少し考えていた そしてゆっくりと 私の目を見て こう言ったのよ 中にいるのは 知らないおばあさんだって だから助けて欲しいと そんな無断侵入者 出て行ってもらいなさい 私はそう簡単に言い放つ 妹に凄い目で睨まれた 今のは妹じゃない 乗っ取られてしまったのね 得体の知れぬおばあさんに どうしたらいいの

氷の坊や(140字小説)

氷の坊やが帰って来るよ お母さーん ボク帰って来たよ 私の坊や おかえりなさい 今度の旅はどうだった 早く帰れたね お母さん 話してあげるよ 氷の世界はきれいなんだ 風の話もたくさん聞けた だけどね 氷達は溶け始めたよ 少しずつ ボクも小さくなっちゃった ボクのお母さんは海なんだ ボクはお母さんの中に戻るんだよね 140文字 南極の氷が溶け出したら、水位が上がり被害を受ける場所が増えていきます。氷の坊やが海に帰るのは、現実にはメルヘンではないのですが。

仮定の行方(超ショートショート)

螺旋状に存在する多種多様な世界は仮定の世界。あなたが今住んでいる地球と呼ばれる星も例外ではない。 地球という螺旋状の時空に、あらゆる仮定の地球が存在する。 しかしながら螺旋というカテゴリーそのものでさえ、仮定の産物なのかもしれない。   決してあなたの存在を否定するつもりは無い。 あなた自身が仮定の産物だとしても、あなたにとってあなたは確かに存在しているのだから。 仮定の現実は間違いなく、ここにある。 なんてさ、ほざいていた奴、最近見ないと思ったら、なんか普通に家庭人に

真夜中の公衆トイレ #たいらとショートショート

トイレに行きたい。 真夜中の公衆トイレの前で立ち止まる。 薫は利用を躊躇した。我慢の限界が近いのはわかっている。店で済ませたかったが、変なおじさんが入ったきり出てこなかったのだ。 家まで歩けば30分、でも今日は酔っているからどうだろう。 何だか夜の公衆トイレは気味が悪い。が、考えている時間が惜しい。 薫は「えいっ」とばかりに、薄暗い公衆女子トイレに入って行った。 四つばかりある個室の三つの扉には『使用禁止』の紙が貼ってある。 残る一つの扉をノックする。返事は無い。

魔法使いの弟子(ショートストーリー)

「ねえ、おばあちゃん。お願いがあるの」 「なんでも言ってごらん」 おばあちゃんは、いつだってそう言ってくれる。 挨拶のようなもので、話を聞いてくれるだけがほとんどだけど。 おばあちゃんに話を聞いてもらうと、それだけで半分解決した気分になるんだ。おばあちゃんの事、大好き。 だけど、おばあちゃんは皆んなのおばあちゃんとは同じようでかなり違う。 だって、私のおばあちゃんは魔法使いなんだから。 勿論、これは家族だけの秘密。 おばあちゃんの息子の私のパパは、魔法使いにはなれないの

灯り(277文字のお話)

ねぇ、おじいちゃん ん? お星さまって、見えるけど、とっても遠いところにあるって、ほんとう? 本当だよ おばあちゃんが亡くなった時、おじいちゃんは、おばあちゃんが遠いところに行ったって言ったでしょ そうだよ、お星さまより遠いところだよ そうか、だから見えないんだね。淋しいね でもね、おばあちゃんからはコチラが見えるんだよ うん、ママも言ってたよ なんて? おばあちゃんは、いつも見守ってくれてるよって そうとも、お星さまもな 空を見上げている二人に、お星