ドブ川の熱帯魚

私しゃね、生まれも育ちも生粋の江戸っ子よぉ!
でもね、そんじょそこらの赤ん坊じゃないのさ。
所謂お金持ちの家に生まれたのさ(笑)
私しゃね初孫でね、そりゃ蝶よ花よと育てられたのさ。
祖父は長唄杵屋の一門でさ、祖母は商売人。父は経営者だった。
豚もおだてりゃ何とかで、そりゃ鼻につく生意気なガキだったのさ。
3歳の七五三はね、根津神社でやりましたさ。
着物はね、手書き友禅の赤い着物でガキのクセに花魁気取りでしゃなり、しゃなりと調子付いて歩いてたのさ。
んでさ、とある女子大の幼稚舎にはいったさ。
ところがどっこい!暴れん坊将軍過ぎて秒でクビになると言うお粗末さよ。
そんなある日事件が起きた…
母が精神疾患になり、祖父母、父の目を盗んで私をこっそり孤児院に打ち込んだ…
普通はここで落ち込む所だが、もって生まれた楽天的な性分でね、「わ~い!毎日お泊り会!楽しい!」
って思う始末。
なんだかんだで父が迎えに来てくれて、家に連れ戻される時には帰りたくなぁ~い!と泣き出す能天気さだった。
暫くして、母が妹を身籠った。
普通なら、お姉さんとして喜ぶ所。
しかし私は妹を愛おしいと思うどころか、憎しみを覚えた。
何故ならば…
今迄一身に受けていた愛情を妹に奪われるからだ。
妹が元気に産声をあげ誕生した。
五体満足の玉のような赤ん坊だった。
私は…失望した。
それからの私は手の付けられない捻くれ者になった。
産後の肥立ちの悪い母に、妹にミルクをあげてと言われれば、ムカムカきて、妹の鼻の穴に哺乳瓶を突っ込む。
当然ボコられる。
で、私逆恨み。
妹が幼稚園の時、私は小学生で遊びに行く時必ず妹を押っ付けられる。
はぁ~!めんどくせー!
ハッキリ言って邪魔!
当時子供達の間で流行っていた缶蹴りで妹を鬼にしてみんなで逃げちまおうぜ?
と友達たちに提案するも必ず正義感の強い子が邪魔をする。
可哀想でしょ、お姉さんでしょと。
と、まあ捻くれた嫌なガキだったけど、今思えばさ、そんな酷い姉に泣きながら着いてくる健気な妹だったよ。
後で明らかにするけど、妹は真っ直ぐ育ち、エリートコースへ。
私は転落人生を送る事になる。
私は中学生になった。自分で言うのもなんだけど
まあまあ可愛かったのよ。
今は見る影ないけどね。
髪型はね、当時流行ってた聖子ちゃんカット。
スカートずりずりヤンキース。
当然、勉強なんか最下位よ。
流石に親がデキの悪さにビビっちゃって、地元では有名な別名、戸塚ヨットスクールと呼ばれていたスパルタ塾にブチ込まれ、そこそこ勉強は出来る様になった。
でもね、根はヤンキースだから暴走族の彼氏が出来ちゃうわけ。
しかもジャニーズ系。
付き合うっきゃないでしょ!
イケメンヤンキースの彼氏と土日は暴走族の集会へGO!
ある日事件が起きた。
暴走族同士のケンカに巻き込まれ、私は彼氏のバイクのケツから落とされ、彼氏は非情にも私に気づかずそのまま走って言ってしまった!
おいおいマジかよ?そりゃないぜセニョール(古)
いい感じに1台のグロリアのシャコタンが私に気づき、私に声をかけた。
「おね~ちゃん、酷い彼氏だね!送って行こうか?」
私は最大限ぶりっ子して、ありがとう♥
と車に乗り込んだが…
なんと、後部座席に男が3人!しまった!輪姦される!私の人生齢15歳で終わるのか!
足りない頭をフル回転させる。
どうやら、この運転手が奴らのボスらしい。
まず、コイツに媚びてみるか…
私は、ねぇねぇお兄さん、めっちゃカッコイイ!
私、あんな非情な彼氏と別れたい。お兄さん、私の相談にのって欲しいです。でも…2人っきりになりたいの。
と、甘えた声を出してみた。
気を良くした男は後部座席の男達に「おい!お前らおりろ」
な、なんとかセーフ。
次どうするか?
とりあえず、テキトーにいちゃいちゃして
隣町の知らない他人の家の前に私の家だと嘘をつき、嫌いな友達の電話番号教えて、トボトボ自宅に帰った。

さぁ~大変なのは次の日!
学校で私は彼氏に詰め寄る!
私は、アンタさぁ~!私は昨日敵対暴走族にボコられたんだよっ!
親にも殴られた事ないのにっ!(嘘だけど)
そして破局を迎えた15の春。

そしてやって気づく今年は高校受験だ!
全然勉強してね~し。
大体小学生から8月31日に泣きながら夏休みの宿題をやるタイプだった。
その性分は今も変わらない
つまり、追い詰められないと本気を出さないタイプ。
気めた!受験勉強に集中する!
1日11時間勉強した。やればできるじゃん。
なんとか第一希望の都立高校に合格した。

時代はバブル期に入ってくる。
ヤンキーブームは
都内では廃れてきて、ディスコブーム到来!
まだ私の高校時代はワンレンボディコンの前で
時代はユーロビートブーム。
学校が終わると駅で速攻着替え、新宿のディスコ
ニューヨークニューヨークに毎日通いだす。
勉強?まだ大学受験迄3年あるし。
デュランデュラン、デッドオアライブ最高!!
また勉強最下位になる
まあ~3年あるからさっ!
そうしてる間にディスコで東京電気大学の彼氏が出来る。
金持ちのドラ息子の典型ね(笑)
親に買ってもらったBMWを乗り回しいつもデートは湾岸道路ドライブだった。
そして高校2年の夏、ワンレンボディコン時代となる。彼氏と麻布のディスコ、マハラジャに入り浸る日々。
ある日、彼氏に「お前さ、大学受験大丈夫?頭悪いんだろ?」
はっ!となる私。目覚めましたっっ!
そして東京電気大学の彼氏と破局した17の夏。
私、目標大学受験のために勉強します!
こればっかりや…
しかし、授業だけでは追いつかないので代々木ゼミナールへ通いまたまた1日11時間勉強漬けの日々。
なんとかなった18の冬。
某国立大学合格!
しかしながら、大学時代は一番私のブラック歴史だった。バブル期、人気があった大学は慶応、青山、フェリス。
まぁ、国立大学なんか東大以外はダッサ!
って言われてたわけ。
確かに、私の大学のキャンパスも皆地味。
田舎くさ~。
あれだけ華やかな毎日を送っていた私も地味~
やる事ないから毎日勉強してましたわよ。
ある日、地元の友達から電話が。
「アンタさぁ、うちのママが経営してるスナックでバイトしない?土日だけ」
友達もバイトすると言うので気軽にok。
バイトして一ヶ月程たった頃、30歳位の長身の男性が来店。
私とその彼は恋に落ちた。
彼は10歳歳上な事もあり、紳士で大人だった。
私にとって、とても魅力的な男性だった。
軽さが無い。落ち着いている。
今迄のチャラ男と違う。
彼も私を真面目な学生と思ったらしい。
実際、その時は真面目だったからね(笑)
それからはハイスピードだった。
2回めのデートは箱根山のホテル。
彼に結婚しようとプロポーズを受けた。
私はえ?マジ私なの?
と返事をした。
カッコよくキメようと気の利いたセリフを言おうとしてズッコける典型だね。
で、出会って2ヶ月でスピード学生結婚。
2ヶ月後、妊娠。
大きいお腹を抱えて通学。
そして五体満足の玉の様な男の子を出産。
私が一番この時が幸せの絶頂だった。
出産後、一週間で復学。息子は母がみてくれていた。
まあ、母とは幼少期、色々あったけど本当にありがたかった。母は優しいおばあちゃんになっていた。
なんとか大学を卒業。
皆さんのおかげです。
そして専業主婦として子育てに邁進する毎日。
永遠にこの幸せが続きます様に!

不幸は突然やってくる。
夫が心不全で死んだ。
亡くなる前、夜中の2時頃夫が飲んで帰宅したらしい。
したらしいと言うのは夫の帰りを起きて待っている様な妻では、なかったからだ。
夫はそのままソファーで眠り、朝7時頃リビングに降りた私は夫の異変に気づき、救急車を呼んだ。
救急隊員が「ご主人は亡くなってます。これから医師、警察を呼びます」
え?な、何それ?どういう事よ!
私は泣き崩れた。
基本、病院で亡くならない限り警察は人の死に介入するらしい。
医師の検死結果は心不全。
彼はヘビスモで、大酒飲みだった。
それからの記憶は正直朧である。
葬儀屋の車に乗せられ、やたらあちこち連れ回された記憶はある。
ほとんど泣き崩れたまま葬儀を終え、やっと落ち着いた頃、様々な宗教団体が家に来た。
何なんだろう、この人達。
何処で不幸の匂いを嗅ぎつけてきたんだろう。
酷い宗教団体は「ご主人、保険金降りたでしょう。そういうお金は不浄のお金よ」
夫が亡くなってから初めて正気になった。
そして怒りがこみ上げた。
てめぇら、帰れ!
大声をあげた。
余程の形相だったのか、宗教団体の人達はすごすごと帰って言った。
頭がやっと切り替わる。私と息子が生きて行くためにいくらお金がかかるのか?
夫は私と息子のために家と財産と保険金を残してくれたが…
息子はまだ小学生だ。中学、高校、大学、大学院
駄目だ!
とても足りない!
私は比較的若く見えた為、キャバクラと言う夜の世界へ飛び込んだ。
別にどうって事ない。金を稼ぐに綺麗も汚いもないんだから!
案外私は順応性が高いらしい。すぐに馴染んだ。
笑える楽しい仲間も出来た。
私は、特別美人じゃないが、人たらしの為、あっと言う間にNO1になった。
とにかくお客さんが言う事は私といると楽しくて飽きないと言ってくれた。
気の合う仲間とつるんで客をどんどん落としてく。
愛してるなんて挨拶がわり。皆さん愛してます。
客から電話がかかってくる。
「今日、俺金ないから行けないよ、ごめん」
私は心の中で呟く。
逃さない…
私は、ねえ、〇〇さん私、貴方に相談があって…
どうしても貴方に会いたい。
鼻をすする。泣き真似だ。
目は笑ってる。
息子が成人したら、心に決めてるの。わたし。
更にたたみかける。
近くにアコムあるでしょ。少しだけお金借りて来て来て欲しい。お金は来月払えば金利かからないんだから。
私はもう、何もかも貴方に決めたのよ?
「本当か?すぐに行くよ!」
落ちた…
どうやら男と言う者は、お金をかければかけた女ほど、手放したがらないらしい。
まあ、リターンが欲しいんだね。
そんな男を10人集会3回程度でオープンラストで回せば良い。毎日出勤すりゃ良いってもんじゃない。
休みも週4日だから当然居ない日もある。
ボーイに少し小遣い握らせてこうささやく。
お客から休みの日に電話きたら〇〇子さんはNO1だから、ご指名のお客さまで手が離せません。
って言ってね。と。
そうやって男の闘争心、嫉妬心を煽る。
そうすると週3日の出勤はオープンラストで全て指名客で埋まり、クズ客につかなくてすむ。
休みの日は息子とゆっくり過ごす。
我ながら上出来だ。
ある日、指名の客から〇〇子ちゃん、デイトレードって知ってると言われた。
初めて聞く言葉だ。何それ?
その客は私にパソコンを買ってくれ、手取り足取りとりって感じで株の知識、デイトレードの仕組みをびっちり教えてくれた。
夜中の12時にニューヨーク市場を見て、全体のトレンドを読んでおく。
睡眠、8時には板の動きを見る。
9時、市場が開く。勝負!!
ビギナーズラックか、師匠が良かったのか面白いように儲かる。
私はキャバクラを辞めた。
私が主にやっていたのは大証と、マザース。
ある日、ヤフー株が大バズりする。当然買い。
午前の部はもうちょいでストップ高。さあさあ!
午後の部は大儲けよ!
ところが…
どんどん株価が落ちて行く。秒単位で落ちて行く。
え?え?え?
あわてて損切りをした。
初めて大損した。
デイトレードの怖さを知った。
そして天下のホリエモン、ライブドア上場。
ライブドア、ライブドア関連株に全て突っ込んだ。
そして、ライブドア破綻。
私は破滅した。

黄昏ていると、昔のキャバクラ仲間から電話が入る。
「〇〇子ちゃん、私らもう歳だしキャバクラもう駄目じゃん?風俗やんね?」
マジかよ…出来んわそんな事。
キモい奴も相手にするんだろ?無理だろ。
いや、言ってる場合かよ。金ねーぞ
クソッ!とっとと金貯めて、足抜けしてやる!
今度は風俗の世界に飛び込んだ。
そこでもすぐにNO1になった。
何故か?
私につく客はドM君ばかりだ。
とにかく普通のプレイはしない。
回りの女の子達は私を特殊部隊と呼んだ。
私は風俗なのに服を脱がないのだ。
何故か?郊外でのプレイだからだ。
思い出に残る客は2人。
1人は品川駅君。
彼とのプレイは店外デートコース。
彼は決まって私に赤いピンヒールを履かす。
そして品川駅へ。
沢山の人が通りすぎる中、私は彼にささやく
いい子ね。私のワンちゃん。ほら、これを拾っておいで!
赤いピンヒールを思いっきり遠くへ投げる。
彼は大きい声でワンワン!と叫びながら口に赤いピンヒールを咥えて戻って来る。
ここ…品川駅だよ…マジでさ…みんなこっち見てるからさ…
もう、これ5時間やってんだけど…
服を脱がないからって楽してる訳じゃない。
もう1人は山手線ゲーム君。
彼も店外デートコース。
彼は毎回自分で書いた脚本を持ってくる。
喫茶店で私にそのセリフを覚えさせる。
覚えたら山手線に乗る。
2人でシートに座る。
彼は大きな声で私に言う。
「どうして俺との結婚は駄目なんだ!」
私も大きな声で叫ぶ。
だって、やっぱり夫とは別れられないの!
もう一度言う。ここは山手線の中だ。
みんなこっちは見ないが確実に聞いている。
だってこれで山手線3周目、誰も降りてない。
何度でも言う。服脱がないからって楽してる訳じゃない。
そうこうしてるうちにかなりお金を稼いだんで
とっとと風俗引退。
今度はバークシャー・ハサウェイのCEOのウォーレン・バフェット氏に学ぶ。
ナイスなタイミングでリーマン・ショックが来る。
激安で五大商社と双日を大量購入。
息子は大学院を卒業し、国家公務員になり
現在に至る。
最後に

懲りない女と呼ばないで!

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