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飯屋のシゴト

宮崎県でタイ料理屋を経営する賭博と女が趣味のロクデナシ中年Tと久々に会い、一杯呑んでいた時のコト、Tが語り始めました

「今年の夏、フジロックに初出店しました、何回か気絶しましたが、いい経験になりました」

それは想像を超える非日常レベルな飲食話でした‥

『FUJI ROCK FESTIVAL』
音楽好きじゃなくても一度はその名を聞いた事がある日本一の規模を誇る野外音楽フェス

フードコートへの出店は毎年10万人近い来場者のライフラインになるだけに審査が厳しく、Tは7年間エントリーし続けてようやく今年の夏、初出店のチケットを掴んだそうです。

夏の太陽が照りつけるサウナの様なテントの中で3日間開催、営業時間は朝9時から翌早朝5時までノンストップ!
仕込みや準備などして、睡眠時間45分くらい。。

その間、腹を空かせたお客さんに継続してクオリティーを保ちながらフードを提供し続けなければならないのです。

キャッシュレス化された会計の回線もパンクしてしまうほど、各出店ブースに腹を空かせた長蛇の列が続き、Tが仕込んだカオマンガイ用の鶏肉500kgとフォー4000食、二日目が終わった時点でほぼ完売!

寝不足と過労の死に体で、フード出店担当者にその旨を報告にいくと

「完売御礼ですか!おめでとうございます!
後は片付けしながらビール飲んで遊んでください」

とはならずに

『何か出来る事をさがしましょう!フードは来場者の大切なライフライン、最後まで出すのです!!』と、フード提供継続の為の、熱い作戦会議が始まったのです

会場内には出店者用の卸売市場もあるのですが、タイ料理の特殊な食材は無く、フードも本物志向なフジロックは代用品など許されず、結局は隣りの群馬県まで往復5時間かけて食材を調達に行き、最終日に臨んだそうです

『出来ない事を出来るように努力する』と言うフジロックスピリットに刺激され、
もう辞めて自分ち帰ろう、とか考える暇もなく

「前夜祭を入れて4日間、腹を空かせた10万人相手に最後までやりきりました」

と語るTの目にはうっすら熱いモノが流れていました。その顔は大仕事を終えた漢の、もしくは風俗でスッキリした中年の横顔のようでした。

ハラがへるからメシを喰う
メシを喰うからまた動く

世間様のこのルーティンに食をはさんでいく事が我が飲食道だと想う自分にとって、ロクデナシ中年の夏の思い出話が何となく印象に残ったのでした。

天晴レにっぽん!!

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