2022/8/23『優雅に踊る』

葦のしげみから、優雅にあらわれて、
誕生した祖国、それは泥の間から、泥の祖国へと、
見るべきものは失われた、
失われてから踊り出す、
朝風とともに、葦原はそよぐ、
軍はこの港を離れ、黙々と歩き始めた、
激しい戦いのさなか、優雅にあらわれて、
踊り出す、
我等はしだいに、こうべを垂れる、
弓と矢は重く、太刀は重く、こうべを垂れる、
あかつきの空はしだいに、
近づく山並みはしだいに、
細い道を行く兵士たちの顔を闇の中から、
浮かび上がらせる、
眠りからさめよ、優雅に踊り出すこの一日の、
風と光と疲れの混じり合ったもの、
いさめよ、祖国はここよりも遠く、いさめよ、
多くの命が失われ、葦原はつづく、
そして優雅に踊り出す、風のなかに、
それは戦いに向かう者の上に、
おとずれる真白き世界、
祖国はひそかに沈み込む、
泥の中へと、葦原の中へと、
そして踊り出す、白い衣の優雅さのゆえに、
白くかがやく、
新しい領土の上に、踊り出す、
それはなんと美しい戦いの踊り、
泥を踏み、泥のしぶきをはねあげて、
優雅に踊る、白き衣、
優雅に踊る、
我等は踊る。