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2022/6/6『旅立ち』

パターソン君は時間の存在を否定した
マキシムの法則を改変して
第七次元の大空へと旅立ったのである
ユーホルビアの窓はすべて開かれている
愛情の飛行船はヘリウムのガスを満タンにして
青空、それと寝台特急のつばさ、もちろん横浜の錨を
輝く空の雲と言う雲の間から
手を伸ばし、量子のパラダイム、むしろ鳳凰の飾りから
こざかしい小僧たちの口は蓮の花を吹き出して
日本海の波のゆれる越前クラゲのゆれる
ホーキング博士の話を間近で聞くわたしの
ネクタイから青空が始まる
そしてしばらくは 旅に立つ幇間 手をすり足をすり
マーメイドたちの足首にキスして行くのだ
プールサイドのトーテムポール、蒼ざめた馬たちの
ひしゃくのこぼれ水のきらきらとアンダーする
カシャ・カシャ・カシャ、吐息のもれる女たちの
肢体・えだわかれした・からだの・きょくぶは
やがて「みずうみの水平線の」曲率として
ラジオソープの透過する画面のかげりゆく
ハルシャギク、エゴノキ、キンケイギク、アマリリス
ほとほといやになると、くちにはしないが
ベビーオイル、ヤンバルクイナ、ハシバミ、マッコウクジラ
旅に出る「小さな人」はまるで絵本の中の
タンポポの服を着て
眠そうな渡り鳥、けしきばむそのときには
ああいくつもの、空がよびつづける
モータンの靴は黒猫の革でできている
なめらかに世界は回転する、のどの奥で、ひらがなとともに
それではここから出発の笛をふきましょう
ざざざざ・ざざざざ・ぎぎぎぎ、美しいその響き
ごごごご・だだだだ・びびびび
やさしい朝の旅立ちです。