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2022/9/18 『愛の葉』

そうしたもののすべて
甘くささやくもののすべて
君は知らないままにコプト語を語る
砂漠の方から、駱駝の隊列が行く
あいさつをしなさい、かぎられた空から
遠く過ぎ去る多くの歴史
みずからの肺と唇でもって
この熱せられた存在の意味を吸い込もうとする
甘くやさしく、いたわりの表情で
岩だらけの山脈の方から来るのだろう
朝はとても冷えてしまう
霜が降りて白くなってしまう
あたたかい抱擁を求めて
日月の絶え間ない光と断絶を求めている
屹立する岩と感情のあいだから
すくなくとも樹林帯は凍結した下半身である
むさぼり食うことをやめて
新月の夜空の多少とも感覚をひきあげようとする
きつく抱きしめる木々の梢からしたたる
雪でもなく、氷でもなく
針葉樹のおののきと、寒月のわななきと
そうしたもののすべてから離れて
いまは愛する君のために
一枚の色づいた「葉」
このラブレターを届けようとする
湖の氷のうえにすべるようにして
届けられる愛の言葉として
君を愛する
風はどこまでも木々の枝をゆすり
わたしの指は君の言葉をゆすり
肌をとけて、髪をとけて、こころをすべらせていく
あらゆるものは感情の梢をゆすり
君の肌から絹の衣服をとけだしていく
君ははだかの木々である
裸のままに立つ月光の木々である
わたしは感覚する
まったくつよく感覚する
君の内部の熱い思いのままに
そうしてわたしの感情は君の中へと浸入する
愛の葉となりその形のままに
君のあらゆる感覚の奥へと
信じられる形として
それはじつに美しい
それは君の感覚の
静脈。