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2022/7/3『山椒の実』

もちろん実はまだみどりいろです
植木ばさみを持ったおじさんが
アポロンに話かけながら
フランスヒイラギの伸びた枝を切る
笑い合う声、アテネの町の石畳の乾いて
野菜畑の虫たちが整列し声をそろえて歌う歌は
アイラブユウ・浜辺のハマチドリ・細いくちばし
細い生命の歴史をたどり浜辺の小舟が
余分な油を落として
鉄のカーテンは極楽鳥の尾羽をひきずり
交差する大地と海の広がり
わたしのからだを大地のプレートのひきずりこみ
どうしてなんだろう、明るいカラーで沈み込み
ヨーロッパそしてイルカたちの群れ
何回も角の大きな羊たちが、わたしを見る
山椒の実が舌をしびれさすので
ドライな心象、羊たちの帰還
モスクの形は心臓から南へと始まる
勲章を求めて南へと進軍する父たちの隊列は
眠り姫、眠りながらの、行進、それはそれはそれは
休みなく続く行進、それはそれはそれはそれは
東の空に輝いているものは
時間世界の空回りする、鳥の羽のかざられた帽子の下
種子を集めて来たのは、博士たちと黒い頭巾の坊主たち
実はそれぞれの時間を背負って泣いた
横歩きするあの人は、しばらくぶりに
壕を渡る
カナディアン、感覚のオーソン、ベルベットの帽子
恋しい人よ、泣かないで、恋しい人よ
山椒の実はまだみどりいろです。