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2022/6/8『ゴーリアス』

名付けられないもの、ローデシアの兜
九十九里浜のなにもない浜辺を走る
名付けられないもの、せんたんの火花
欲望のコヨーテたちが歩き回る
探しうるもの、待ち構えているもの、ピッコロ
痛ましい蝋細工のサンピエトロの塔から
わたしは見る、肥大した工場の過度の煤煙
それもイイダコの味噌のざっくりとした味わいである
北陸地方の枕の下には「いかのあし」が渦を巻く
深く思考する哲学の季節はアジサイである
青く神経の束が発光している夜間の十字路
ふるえている、道はふるえている、何時間も
そしてあけぼのの「狼煙」が平安京の築地塀からあがる
ぬきてさして、スイミングプールの、コーチのぬきてさして
あけぼのの光は東の空から西の空へと
あざとい理想の都市が伽藍を築く
アボリジニの裸足の足裏の蝶のように
いと感涙の春の産婦する
どこにも行かない、シルルは裸の透明の春を過ぎる
誇り高き「名月の頃」、浴室の泪のような
農奴は働かねば食って行けないのです
だからゴーリアスよ、眼を閉ざすエジプトの
壁画の神々たちのあざやかな衣服の
精神の内容物は静かな未来のために
スイレンを生み出し、蓮の花を生み出し
ナイルの渇き、シメジの類はアラーのスープとして
ランオンの口を開き扇の的を射抜こうとする
わたしはゴーリアス、わたしはカボチャの厚い皮
飛行するてんびん座
あてどなく、らっきょう漬けを探して旅立つ
その悲恋のまばたき
ましてトナカイのスカート
わたしはゴーリアス。