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2022/8/16『やや傾いている』

まず、屋根の上をイメージしてもらう
材質は特定できない
それから身体は抽象化される
傾きは現状では自由に決定できる
ただ、すべり出すと、とめられない
そのことだけは確かなのだ
そのことのために、わたしは注意深くなくてはならない
このような場所に立ったときには
かならず恐怖がおとずれる
しかし落ち着いて、靴の裏の摩擦をかんじることだ
やや傾いている、この屋根のうえで
心は澄んでいる、心は落ち着いている
そしてなによりも、わたしは何の不安もない
だから、声がしたとき
わたしは、一瞬
やや傾いている抽象化された屋根のうえで
身体が存在していることを思い出したのだ
限りなく、わたしは恐怖を感じた
ここは確かに、やや傾いた屋根のうえなのだ
傾きは自由に仮定される
靴の底の摩擦係数もまた、自由に仮定できる
だから、まず、だいじょうぶなのだ
心配することはいらない
しかし
いま
わたしの抽象化された身体は
やや傾いている屋根の上で、すべりはじめた
その場合、それはけっして
とめられない。