現代詩の世界2022/5/2『量子』
今いるところは、朝日のあたるところ
その仮想的世界のプランク定数
ひずみのあるばね仕掛けの歩く速度の一歩がおかしい
記憶の中ではアシナガバチが東の空へと消え去る
神の存在する真昼の処刑場で、人々はチューリンゲンの計算機を
カタカタと振る、そこから導かれる結論の背後
人間の意識する地平線の到達する新大陸の野蛮なる文明を
神々の存在する午後三時の流行と不易の狭間で
短い間隔で演奏され、星間飛行の最低限の燃料として、金は
燃えている、キンは燃えている、ひどい匂いがする、悪臭がする
そして女たちのジェスチャーは新しい文明のダンスである
ヒクイドリの強靭な足で、藁の人形を蹴る
神殿の階段を登り、あめつちの原子の振る舞う、階段の
呼びかけに応える、紫の衣、その人
銀は燃えている、伯爵の杖の、バサラのこなごなになり
真空の神殿装置としての核融合する部屋から
われわれの原子はこなごなになり
地平線から量子は飛び去る
わたしたちは神々の世界へと招かれている
夾竹桃の毒のようにあつくなる
真鍮の平板のあつくなる、夜の渡り廊下のあつくなる
ここは神殿の内部である、光がもれている
螺旋のおもかげを電流が模倣する
意志する鉛のように、意識する白金のように、金属の群が
飛び立とうとする、宇宙空間へ手を伸ばし、量子を捕獲する
蛍光の中を静かな音楽とともに、人間が浮いている
わたしの内部の崩壊する陽子の
時間を意識するのは
誰か。