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2022/6/21『アンリエッタ』

ひろがる世界のすみずみから
わたしを呼ぶものの声がする
とてつもなく大きな声で
アンリエッタ、ツツガムシの背に乗って
ピアノ線のわだかまりにおしまれつつも
デストピアのマドモアゼル
ひるがえって、逆巻く波の、コーダを呼ぼうとするのだ
愛情から来るものは世界の芯から凍らせるもの
アンリエッタ、侍の手から、シルクハットから
蒸気機関からわたしたちは見るのだろう
少し白くなり
てのひらに少し白くなり
ガボラから聞いていた通りの安い酒の瓶である
わたしたちは酔っている
少し道がゆれている
階段状のこれは夢へののぼり坂である
変身する亀の肉体のランスから
変貌するセキレイの羽の確かさと言えるもの
欲望の姿は変容する姿である
わたしの脳内の変わりなく変わり行くもの
スクリーンの端の方では
アンリエッタ、コメツキムシがひっくり返る
すみやかに外へ出て
愛するものの手の中に手を置いて
わたしは言うだろう「ミシンが踏みたい」と
明けがたの隅の方
ぷっつりと、正面から、近づいて、愛を語るもの
それはハハコグサ
そして歴史的今日の
「世界の日々」なのだと
わたしたちは了解している
アンリエッタとともに明日も歩くだろう
信じられるのは
ただ信じられるのは
通り過ぎる「写真」。