2022/7/28『蝉』
必然的に堕落的に表出する蝉
過去については問わないまでも
レールは曲がりかけている夏の
ポジションを転換する日射しの
ラウルからサバウルへと
少し湾曲する空間を行く
少女の肩はあざやかに焼けて行く
ロッジからアイスクリームの店まで
蝉は叫び、いちだんと魂の奥は
キャベツの重さよりも
みつめるそのひとみよりも
山道は狭く、樹々は高く、世界はまぶしい
わたしのこころはすでに一番熱く
はっきりと言えることは精神の
膨張する宇宙の光よりも速く
きっとそれらは手をすり抜けて行く
だからこそ蝉の声は叫び
「いやですと」蝉の声は山道に響き
わたしを否定する
きっとシグナルは最前線に響く
ラウルからのモジュールからの
きらめくもの
さしだされたもの
約束されたもの
途上である。